日田口刀力

第1話

 会場は二百人ほどの記者でごった返していた。この規模の記者会見でこの人数が集まるのは異例の事だ。主催者側もそれを見誤ったのだろう。もう二回り大きな会場の方が良かったかもしれない

。20時開始予定の会見は5分ほど押しており会場は主役の登壇を待ちわびて否応もなくざわめいていた。

 10分を過ぎた頃、壇上が俄に慌ただしくなりいよいよ会見が開始された。

「皆さん、お待たせいたしました。それではご登場していただきます。新しく定められたノーベル環境賞の第一号受賞者となった大島貞夫様です。なお、本日はご本人様よりちょっとしたサプライズがあると伺っております。それではどうぞ。」

 会場の拍手の中今回の主役である人物が壇上に姿を現した。小柄で痩せ型の中年男性でこの場にそぐわない地味なスーツ姿で照れくさそうに微笑んでいる。

「こんばんは、皆さん。本日は大勢の方々にお集まりいただきありがとうございます。。今回このような身の丈に合わない素晴らしい賞をいただき大変光栄に思っております。」

「ここで大島様の数々の功績の一部をご紹介させていただきます。まずは、皆様もご存じの人工光合成の発明。この発明で地球の寿命が1000年延びたと言われています。バイオ活性炭及びそれを用いたエコ濾過システム。プラスチック分解酵素。各種ウイルスの無害化。害獣保護対策など。その功績は多岐にわたり主に環境問題の解決に貢献してきました。ノーベル環境賞の創設にも影響を与えています。しかもこれら全ての技術において特許を取得することなく情報を公開しており、その点も受賞に大きく貢献したと言われています。こういった数々の発明をするに至ったきっかけを今日はお話ししていただけるそうです。」

「ありがとうございます。これからするお話は私の経験した話なのですが、皆さん始め全ての人類に対するメッセージです。それではお聞き下さい。」

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