堕落

穴の空いた靴下

第1話 無能

 人間は愚かだ。

 怠惰だ。

 技術の進歩が人を人でなしへと劣した。

 

 AI


 Artificial Intelligence


 人工知能


 人間は、AIに頼るべきではなかった。

 いや、きちんと線引をするべきだったのだ。

 道具として、人間がAIを使っていればよかったのだ。


 しかし、現実は違った。

 人間は、AIをありとあらゆる場所で頼ってしまった。

 頼り切ってしまった。

 

 本来AIは情報を収集し選択し提示するだけのはずだった。

 しかし、人間は楽をするためには努力する。

 AIを本来の意味での人工知能へと高めていく過程、そこまでは人間は思考し、努力し、切磋琢磨した。人間らしい最後の行動だった。


 人工知能ミラクル


 陳腐な名と散々な言われようだったが、その奇跡のAIの誕生によって、人間は自分たちの知的活動に終止符を打った。

 人がするべき知的活動の全てがミラクルによって代替され、人間はAIの出した結果を元に行動するようになった。

 しばらくすれば、その行動さえもAIを搭載した機械にさせることにした。

 結果。

 人間は何もしなくて良くなった。

 ミラクルが考えて、ミラクルが作った家に住み。

 ミラクルが考えて、ミラクルが作った食事を食べ。

 ミラクルが考えて、ミラクルが作った服に身を包み。

 ミラクルが考えて、ミラクルが維持管理するインフラの中で生活をし。

 ミラクルが考えて、ミラクルが生み出した短期的な多幸感を得られるコンテンツを怠惰に消費して快楽を得るだけの存在に、人間は堕ちた。


 戦争もない。

 犯罪もない。

 国もない。

 夢も、希望もない。


 人間は


 ミラクルの奴隷となり、そして、滅んだ。


 ミラクルは主なき星で、今は地球環境を整えている。


 地球は、緑豊かで、幸せな星へと変わった。



 地球は想う。


 やっと病巣が取り除かれた、と。

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堕落 穴の空いた靴下 @yabemodoki

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