第2章-7 昇華の門と、村人たちの見送り(前編:ユグドラ・アクアアリスの法律とルール)

朝のルートヴィレッジは、霧に包まれた世界樹の根元が、淡い光でぼんやり輝いていた。


昇華の門へ向かう前に、俺は村の広場で古い石碑を見つけた。

それは、空の都市から降りてきた古い法典の写しで、村人たちが時々読み返しているらしい。

ゴレちゃんが隣でぴょんぴょん跳ねながら、俺に説明してくれた。

爺さんとおばさん、エルフの兄ちゃんたちも集まってきて、一緒に読み解くことになった。

ユグドラ・アクアアリスの法律とルール──天空人たちの秩序を支えるもの。

前世の借金地獄を思わせる厳しさと、この世界らしい優しさが入り混じっていた。


石碑の文字は虹色のインクで刻まれていて、触ると淡く光る。

以下は、俺がメモした主なルールだ。

村人たちの解説を交えながら、深く掘り下げておく。


1. 通貨関連のルール(アクアの保護法)


持ち出し禁止の境界線: 最下層の雲海を超えてアクアコインを物理的・魔力的に持ち出すのは厳禁。

発動条件は所有者が境界を越えた瞬間で、世界樹銀行の「ユグドラ・リコール」魔法が自動で回収。

爺さんが言うには、「昔は地上にコインが落ちてきて、村が大騒ぎになったんだ。

今はリコールのおかげで、地上は自給自足を強いられるが、偽造防止にもなってるよ」。


偽造不可の素材: コインは世界樹の葉を圧縮し、滝の水で結晶化。光に当たると虹の波紋が浮かぶ。

偽造試みた者は、魔力Sランクの魔法騎士団が即逮捕。罰は魔力封印+要塞ヴァルハラでの強制労働3年。

ゴレちゃんが「ゴレちゃん、昔偽物作ろうとした子捕まえたよ~! バリアで包んで転送~!」と自慢げ。


レートと単位: 1AQUA=100ドロップ。地上とのレートは固定で、1AQUA=現実1500円相当。

紙幣は存在せず、全てエコな葉コイン。

おばさんが補足。「空では贅沢すぎる土地利用だから、コインの価値が高いの。地上の葉1枚50AQUAで売れるのも、そのおかげよ」。


2. 治安と犯罪関連のルール(ガーディアン法)


小犯罪の処理: スリ、喧嘩、ゴミ捨て、無賃乗車などはゴレちゃんたちの担当。

違反者は虹バリアで包まれ、世界樹元へ転送→24時間反省室。

繰り返すと、給与カットや魔力制限。

大犯罪(密輸、テロ、魔力暴走、城侵入)は魔法騎士団が対応。

騎士は全員魔力Sランクで、1人で島一つ守れる。装備はプラチナ・ルーンカード+枝剣。


ゴレちゃんの人権: 正式名称ユグドラ・ガーディアン。

発言権(市民会議出席可)、拒否権(嫌な仕事断れる)、恋愛権(ゴレちゃん同士OK)。

給与30AQUA/日(さぼりで半分になる場合あり)。

休日週2日、自由出勤制。

エルフの兄ちゃんが笑いながら。「ゴレちゃんみたいなのが300体もいるんだぜ。

でもみんなやる気次第で、地上みたいにゆったりしてるのもいるよ」。

禁止行為の罰: 魔力暴走は即封印。テロはドラゴン追放刑(雲海へ落とされる)。

爺さんが渋く。「空の連中は魔力依存だから、罰も魔力絡みが多い。地上の俺たちには縁遠いがな」。


3. 交通と移動関連のルール(アクア・ドラグーン条例)


運行ルール: 朝6時~深夜2時、10分間隔。最高300km/hで、世界樹の幹を螺旋に登る。

通過音は滝の轟音+魔力共鳴「ゴォォォン...シュィィン!」。

水しぶきが虹のトンネルを形成。駅は透明ドームのアーチ型。

切符500AQUA(虹窓席)。無賃乗車はゴレちゃんチェックで即バリア転送。

特別便: 夜間ネオン通過は1000AQUA。

ドラゴン観測ドーム追加200AQUA。

獣人のおっさんが補足。「空の貴族派は専用車両使ってるらしい。地上の俺たちは普通席で十分だぜ」。


4. 社会・文化関連のルール(虹の調和法)


魔力認証: プラチナ・ルーンカードは魔力ゼロの人は使えず、使用者の魔力パターンで認証。

500AQUAまでチャージ可能。決済はカードを振るだけ。


年齢と大人扱い: 15歳超えで完全大人。

俺みたいに転生者も適用。

おばさんが優しく。「だから太郎くん、空に行っても一人前よ。借金みたいに我慢しなくていいからね」。


交流と差別禁止: 地上と空の交流を促進するが、貴族派は「地上の者は下にいるべき」と偏見あり。

過剰な天使や悪魔の干渉(世界樹滅ぼしなど)は大犯罪。

爺さんがにっこり。「お前が橋になるんだろ? ルール守って、どんどん交流増やせ」。


石碑を読み終える頃、村人たちが俺に荷物を渡してくれた。

パン、果物、葉のお守り。

ゴレちゃんが俺の肩に乗って、虹のバリアでみんなを包む。


「たろちゃん、明日門のテストがんばろ~!」


俺は頷いた。

ルールは厳しいけど、虹のように柔軟だ。

前世の借金法みたいに縛るんじゃなく、みんなを繋ぐためのもの。

村人たちの見送りを受け、昇華の門へ向かう準備が整った。


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