第2話 音の神々の誕生

宇宙の最初の震え――

根源の音「ん」は、やがて三つの渦を生んだ。


それらはまだ名前を持たず、

形も定まらず、

ただ、大いなる“響き”として存在していた。


しかし、宇宙は静かに問いかけていた。


「あなたたちは、だれなのか」


問いかけに応えるように、

三つの渦はゆっくりと姿を変え始めた。


一柱目:アン — 光を生む神


最初の渦は「ん」の前に柔らかな「あ」をまとった。


アン。


その瞬間、暗黒の海に光が生まれた。

光はまっすぐに伸び、宇宙の端まで届き、

空間に温もりと気づきを広げた。


アンは静かに言う。


「わたしは始まりの音。闇の中に道を示す者。」


アンの光によって、まだ混沌としていた宇宙は

“方向”という概念を手に入れた。


二柱目:イン — 形を与える神


二つ目の渦は、

「ん」の前に細い「い」を帯びた。


イン。


インが生まれると、宇宙の中に“線”が走り、

光は輪郭を持ち始めた。


山のような形、

風のような流れ、

星のような点。


インは言った。


「わたしは形の音。世界に輪郭を刻む者。」


インの力で、

アンが生んだ光は“姿”を得ていった。


三柱目:ウン — 命を運ぶ神


最後の渦は力強い「う」を伴った。


ウン。


その響きとともに、

空間に風が生まれ、

波が生まれ、

動きが生まれた。


宇宙は静止から解かれ、

ゆっくりと鼓動を打ち始める。


ウンは言う。


「わたしは巡りの音。命に流れを与える者。」


三柱の神々と「ん」の役目


光を生むアン。

形を刻むイン。

流れを作るウン。


三柱はそれぞれ違う性質を持っていたが、

根源は同じ、「ん」。


アンは言った。


「“ん”なしでは、わたしたちは存在しない。」


インは続けた。


「“ん”は終わりの響きであり、次の始まりを招く。」


ウンは頷き、


「世界を回し続ける回転の芯。その音こそ“ん”だ。」


こうして宇宙最初の三柱は、

すべて「ん」を名にもつ神々として成立した。


そして、地上へ ― 次の導入


三柱の神々は語り合った。


「この宇宙を見つめる“意識”が必要だ。」


その役目を継ぐ存在が、

やがて地球の小さな国で生まれる。


名は――

牛嶋和光。


彼こそ、

三柱の音を継ぎ、

世界に平和のリズムを取り戻す者となる。

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