第3話 『An enemy? or maybe...』
「いやー、とんでもない騒ぎを起こしてすみません。結構、派手にやっちゃったもので――」ラメアが言い終わる前に、その女性はラメアに1ⅿくらいの巨大なハンマーで飛び掛かる。
『速い!そして、なんだこの感覚――。』見事に攻撃をかわしたラメアではあったが少し違和感を感じた。同僚から盗んだアビリティ『L. F』を使ったはずだったが、若干の"ズレ"が生じたのだ。
そこへ、ラメアをカバーする形でラル、キイラは飛び掛かる。
「へーい、ちょっとお嬢さん。そりゃあ、"無い"んじゃね?」言葉と共にラルはアビリティ『パントマイム』を使用した。
――しかし、通用していない。もはや、奥にある自販機が転移していた。
「すまん、ちょっと位置ミスったぽいわこれ。」ラルも違和感を感じた。確かに、転移対象をその「女性」にしたはずだったのだ。
「ちょっと、使えないな!!キイラどうにか変えてくれ!!」意外にも力強い女性に、ラメアは珍しく手こずっていた。
『L.F』が使えなかったのか?それとも、ただコイツの速度が速いのか?――。
キイラはあまり使い慣れていないアビリティ『パラダイム』を一か八かで使用した。
『どうか、未来よ。我が道へと歪みますように!』そう心で唱えた瞬間―、それは”通用”した。彼女の動きが0.2秒の間、鈍った。そして、0.2秒という時間は彼にとっては十分すぎる。
「一旦、そこまでに!!」キイラが言い放つ。さらに気づけば、彼女のハンマーはキイラの手に渡っている。
「驚いた。これは想定外だった。」彼女は余裕そうに振る舞いながら言葉にした。
「悪いけど、出会って10秒もしないで殴りかかるってなんすか?もしかして、あなたも管理区の犬なんですか?」ラメアは少し不満げにも、煽る口調で話しかける。
「いいえ。私はそんなのとは関係ない。ただ、あなたたちの才能を実際に確かめたかったの。」もはや余裕どころか、戦闘ができて満足しているらしい。
「すみませんけど、それって強い人が言うセリフじゃないんですか?」見事に彼女の動きを見切ったキイラは得意げに言い放った。
「いいえ。私はあなた達より強いと思っているわ。私の名前はゾーイ。私はラメア君の転覆計画に興味を持ったの。」
――なぜだ?誰にもそんなことを言ったつもりはない。ましてはコイツらにその話すらしていないというのに。これは非常事態すぎるな...。
「ん?ラメア、そーなんか?」
「転覆計画ですか!?まさか、僕をそんなことに巻き込もうとして...!!」
あーあ、終わったよこのゾーイとかいう奴のせいで。まあいい、正直に言うとしようか。いずれは対峙しなければならなかったもんな。
「そうだ。俺はこの世界を転覆したいと思っている。だから君たちを呼んだ。それ以上の以下でもなんでもない。」意外にもその言葉に動揺するものは誰1人、いなかった。
「んー。なるほどな。」「そういうこと、だったんですか。最初から。」ラルとキイラが述べた。同時にラメアは『L.F』で自身が殺される世界線がないことを確認した。
ただ、1つ気になったのはとある世界線の中に、この会話を盗み聞きしている人物がいたことだった。
「ちょっと待っててくれ。」ラメアはそう言い、『L.F』と『パントマイム』を応用して、別の世界線で盗み聞きしていた人物をこの世界へ引きずり出した。
「おい、お前。俺の世界で何をするつもりだったのかな?」ラメアは引きずり出した人間へと言葉を投げた。
「いやー、これはこれはー。まさかそんなこともできちゃうとはねー。やっぱり、君は只者じゃないよー。」服装から推測するに中央管理区の人間だ。それもトップの人間だろうか。
「質問に答えてもらっていいかな?それを答えとは言えないと思うけど」
「あー、ごめんごめんー。何をするつもりだった?って言われてもなー。僕はただただこの結末がどーなるか気になっただけさ。別に邪魔をするつもりはなかったんだけどねー。」
「自分がトップだからって調子に乗ってる系か。それはいいけど、ならどっか消えておくれ。俺にも計画ってものがある。」
「計画ね~、転覆でしょー?いいじゃん、俺にもやらせてよー。」引きずり出された哀れな男はそうニヤニヤしながら得意げに語った。
「それはわかったけれど、まずは名前から名乗ったらどうでしょうか?」
名乗りもせず俺に殴りかかってきたお前が言うなよ...。
「あー、ごめごめ。俺の名はね、ジェーンだよー。もっと詳しく深堀すればねー、中央管理区の幹部的なポジションにあたってるよー。」
ラメア、ラル、ゾーイはびくともせず、キイラだけが凍り付いた。中央管理区以外で、中央管理区の人物とは遭遇することはそもそもない。なぜなら、中央だけですべてが成立するほど、栄えているからだ。
「え?そんな馬鹿な!!中央区の人間がどうしてここに?わざわざこんな土地へ来る必要なんかないのでは??」
「君、キイラくんだよねー?その反応うれしーよー!!!それに比べてさー。ほかのみんなはなーんも言ってくれないじゃーん。」
「興味はない。」「興味ねー。」「興味ない。」3人そろって口にした。
「いやー、サイテー。まーいいけどさー。でさー、東区は壊滅したけどー、次はどこを攻める気なのさー?」
「ん、全く考えてなかったな。ごめん、みんな」。ラメアは第7課の勤務外では意外と頼りにならないのかもしれない。
「あそうなのー、じゃあ俺からは北区をお勧めしようかなー」
「誰が中央区の奴の話なんか聞きたいの。」「中心だか、なんだかしらねえけど、俺は興味ねえや。」ラルとゾーイは気が合いそうだ。
「まあ、それに関しては俺が決めることだ。みんなはただついてきてくれればそれでいい。」みんなにはできれば能力をパクった上で、死んでもらいたい。さらに、中央区が持つアビリティがなんなのか気になるしな。
「てかよ、マジでこの辺寒すぎじゃねえか?どっかにでも拠点作ったほうが良いべ。」
ラメアが仲間と連絡してから2時間くらいが経つ。日も暮れてきて、超寒いらしい。
「確かに、アジトらしいものが欲しいな。せっかくメンバーは集まったんだ。」
「え?これってもしかして、僕もメンバーなんですか?」微かに震えながらキイラは問う。
「うん。」ラメアの答えは一瞬だった。
「となればー、中央区に来てみる~?意外とさ、みんな見たこともないだろうしー、ビックリするんじゃないかなー?」
「絶対だめ。」意外にもゾーイが即答した。
「まあ確かにゾーイの言うとおりだ。お前は元はと言えば、俺らの話を盗み聞きしてただけのカスにすぎないからな。」
「ぐえーー、言いすぎじゃないかなーそれ?」
「それで、俺の転覆計画に賛同してくれる人は誰かな?」
「文句ねえよ。」「私も。」「はーーい。」あと1人からの返事がない。キイラだ。
4人でキイラの方へ一斉に視線を向けてみると、
「はい、文句はないっす...。」
「ではこれより、この5人で活動させてもらう。改めてみんなよろしく頼む。まずはアジトを作ろう。」ラメアがそう言い放つと、他の4人は自然と気が引き締まった。
――これから命を賭けた超計画が幕を開けようとしているのだから。
「そういえば、東区の一部にカラオケがありましたよね?そこってラメアさん壊したりしましたか?」キイラはラメアのことを破壊神とでも思っているのだろうか?まあ、これからやることは破壊行為に近いので変わりないが。
「いや待ってくれ、よりによってなんでカラオケなんだ?普通だったらマンションとか、その辺のオフィスを改修すれば――」ラメアの言っていることに間違いはなかったが
「おー、カラオケねー、いいセンスしてると思うよーーー!テンション上がってきたなー。」
「ケラオケ?なんだそれ、ちと行ってみて~かもしらんわ」
「確かに個室もあってプライバシーも保たれているわね。」
4:1により、ラメアの敗北が決定した。どうやら、ラメアのアジトはカラオケルームになりそうだ。
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