第4話『Inside The Karaoke room』
―――2時間後、カラオケを発見して中に入っていた。
よりによって俺の組織のアジトがカラオケになるとは思わなかった...。なんか、ちゃんとした高層ビルとかマンションを期待してたからすごいショックではある。けれど、コイツらを見てるとなんだか間違いでもなかった気がする。
「これさー、歌って、歌えんのかなー?バーチャルマイクないからダメかなー?」
「ケラオケって歌を歌うところやったんか。初めて来たわ、んなとこ。」
「え、もしかしてこれ!歌えそうじゃないですか!?!?」
キイラくんさあ、余計なこと気づかないで欲しかったなぁ~。そういうのは俺の空気を呼んで――。
爆音でアニメ主題歌が流れ出した。このアニメの存在を誰が知っているだろうか?
そういえば、ゾーイを見ていない。もしかして探った情報をどこかに通達しようとしているのか?となれば、俺は仲間を殺さなくてはならない。
「ゾーイを探して来る。」そういいカラオケの3号室を後にした。3号室は1番部屋が広いため、今後メンバーが増えても問題なさそうだ。
『ドンドン!』2号室のドアへ激しくキックした。
「おーい。ここにいるのか?」光の1つもない空間へのドアをゆっくりと開ける。部屋全体が少し乱れている。辺りは医療箱や包帯で散らかっていた。そこにゾーイの姿はない。ただ、テーブルには1枚の紙があった。ただ、後半部分がちぎれており、全てを正確に読むことはできなかった。
『どうしよう。ぼくはこんなとこに来なければ良かったのかな。治安警備部にあこがれてがんばって――のに、こんなけつ末をだ―――ろ。もう、ここにぼくの家ぞくはいない。家ももうのこってないはず。家にかえったり、宿だいしたり、みんなで生活するのは――前じゃないんだ。先せいも、たぶんいない。助けてくれるのは、――いしか。 早くげんきになってね』
おそらく、2週間前の焦土化に事件の日に書かれたものだろう。ただ、こんなものは置いてあっても気が悪い。
――彼はそのメモ書きを『パントマイム』で消した。
そんなことより、ゾーイを探さないといけないんだった。もう人を消すことにも躊躇する必要はない。仮にゾーイやキイラがどこかの内通者だったとして、次に会った時には”敵”だったとしても、何の迷いもなく消せるだろう。
しかし、一番頭を抱えたのは、ジェーンの存在だった。
中央管理区なんて、もともと庶民からしたら一生無縁の関係だ。そんな重要機関の人間があっさりこっち側に来るとは信じがたい。だが、出会ってすぐに、転覆計画に賛同したり、転覆に関する助言をしたりしてくれるだろうか?
ただ、最も興味深かったのは"中央管理区より上位の組織が存在する"という情報だ。証拠もしっかり押さえてあるし、この情報と引き換えに彼は正式にメンバー入りを果たした。だからアイツの事は白として見ておきたい。
そう考え事をしているうちに1号室をうっかり通り過ぎていた。
『ドンドン!』次は1号室のドアから激しいキック音が響いた。
「ゾー...イ。」そこにはカラオケのソファで、もぬけの殻のように寝ているゾーイの姿があった。
まあ戦ったこともあったし、相当疲れてたんだな。まあ、ここにいたことが確認できて良かった。てか、3号室からの騒音てここまで響くのかよ。良く寝れてるな。
普通に寝ようとしている人からすれば非常に寝にくい環境であった。
ひとまず、1号室はうるさいし、外にでも行くか。ロビーはたしかこっちだったはず。あったあった。ここのドア意外とおしゃれなんだな~。
ドア越しに黄色い光が見えた。
え?まさか治安警備部か?だとすれば、何課が来たんだろう?
――その瞬間、ラメアの身体はドアを貫通した鋼鉄の厚い鎖で拘束された。
身動きが取れない。アビリティの使いようもない!なんだこれは!!
ラメアが外へ急速に引きずりだされる。同時にロビーのドアも豪快に破壊された。
「ここにいたのですね。」そう言ったのは懐かしい元同僚である『ミヤ』だった。
その横には『タナト』がいた。どうやらこの『拘束』に関するアビリティはタナトが持っているらしい。
「何があったんですか!」タナトは今にも泣きだしそうな声で必死にラメアに訴える。
「いや、君はまだ知る必要すらもない。君はまだまだ”子供”なのだから。」
「ただ、!僕は!帰ってきてほしいだけです!!」
タナトが涙をこぼすと同時に、『拘束』する力も弱まったのも感じた。
「私は、今までにあなたの力になれていたでしょうか。そしてこれからも力になり続けることはできるでしょうか?」元同僚が語る。
「うん。充分すぎるほどに力になれてたよ。そして、タナト君も、結局一緒に仕事することができないまま終わって、申し訳ない、こんな形になって。」
「あなたは治安警備部第7課で過ごせて幸せでしたか?」いきなり哲学的な問をミヤから投げかけられた。
「ああ、嫌いじゃなかった。」
ラメアが答えると、明らかに拘束力が無くなった。ただ、軽く縛られたような感覚に近い。
――まさに”今”だな。
彼は縛られながらも右手でハンドサインを示すと、『パントマイム』が発動し、見事に拘束から解き放たれた。
まずは、ミヤから潰す。大人1人さえいなくなれば、相手はただの”ガキ”だ。
しかし、気づけばタナトの隣にあったミヤの姿は消えていた。いつの間にか姿を消していた。
アイツはどこに行ったんだ?まあいい、先にこのガキを潰してから考えよう。
タナトは泣き崩れており、もはや抵抗の余地すらなかった。
「ごめんな、ちょっとだけ休んでこい。」
ラメアは『L. F』と『パントマイム』を応用し、”タナトが存在しなかった世界線”へと彼を送り込んだ。しかし、その世界線は妙に時の流れがおかしかった。
「あの子はもっと幸せになるべきだと思ってしまった。これに関しては俺の負けだな。」
「あなたにも慈悲はあったんだね。」突然、背後から誰かに話しかけられる。
「一体、君は誰の事を言ってるのかな?」
そう言いながら振り返るとそこにはゾーイが立っていた。
「お前。もしかして『ミヤ』なのか?」ラメアは困惑した。
いくらなんでもこれは好都合すぎる。消えたと同時にミヤは単純にゾーイに成り代わっただけだろう。
「いいえ。そんな奴はすでに殺したわ。」右にはミヤの遺体と思われるものを掴んでいた。その遺体からしてミヤの存在は一瞬で”消された”のだろう。
「あ、マジか。それはちょっと意外かも。あんまり昔を思い出したくないけど、ミヤは意外と有能な奴だったから。」
「へえー。」
「治安警備部第7課って知ってるか?」
「知らない。」
ラメアは懐かしそうに、遺体から目をそらすように地面を見つめながら話した。
「まあ、そこで4年勤めてたんだけどさ。業務は主にミヤと組んでた。で、ミヤは強くてさ、絶対に死ぬことはないって思ってたから。」
「メアって悲しいって感じることあるの?」
「うーん、今までにおいて1度も同僚を亡くしたことはないからな。」
「そうなんだ。なんかうれしいかも」
「いや、それはどういう意味で言ってるんだ?」
「まあ、そんな人を”殺せた”からかな?」
「お前って意外と最低なんだな」
「え。どの口が言ってんの?」
―――2人はカラオケルーム3号室へと向かっていった。
タナトが落とした紙に気づかずに。
『ミヤさんがげんきになった。家がなくなってからミヤさんといっしょに生活することもおおくなってきた。ミヤさんはラメアさんに会いに行く言ってくる。ぼくはいや。けど、どうしても信じてほしいって。ラメアさんがいない間にラメアさんがどうなっちゃったかしらない。だから会うのはすこしどきどきする。ミヤさんは人について、よくくわしいみたいだから。ぜんぶわかるって言ってた。だからきっとかえってきてくれるんだとおもう。』
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