第5話 大混乱!治療は殴打式

協会長から「新ルール」を言い渡された。


治す前に“一言”宣言すること。


バルクは胸を張った。


バルク「よし!今後は誠心誠意、宣言してから叩こう!」


受付嬢(叩く前提なんだ……)



救援依頼が入る。

草原で熟練パーティが魔物に苦戦中とのこと。


受付嬢「ヘルスニキさん、お願いします!」

バルク「任された!」



バルクは風を切って草原へ降下。

魔物と冒険者たちが入り乱れる修羅場。


剣士「たす、け……ぐっ!」

肩に深い噛み跡。毒も回っている。


バルクはすぐに駆け寄る。


バルク「落ち着け。これから叩くぞ!治るからな!」


剣士「は!?いきなり何言って――」


パァァン!!

手のひらが綺麗な音を立て、剣士の顔をビンタした。


剣士「ぎゃああ!!……あれ?痛くない……?

 っていうか毒、消えてる……?」


仲間たち

(“叩く”宣言がマジで怖い)



弓使いが弓を抱えたまま叫ぶ。


弓使い「腕が!!右腕が折れたかもしれない!」


すかさずバルクが駆け寄り、拳を振り上げ⸻


バルク「わかった。叩くぞ」


弓使い「た、叩く……?それ殴るの間違えじゃ……ぎゃあああ!!」


ドゴッ!!


弓使い「ぜえ、ぜえ……腕が!軽い!けど怖い!」


仲間B

(治る瞬間の顔が毎回ヤバい)



魔物(アーマードベア)が突進してきた。


ベア「グオオォ!!」


バルク「滅!」


ドンッ!!!!

メイスが地面にめり込み、ベアが肉塊になる。


魔術師「なぁ!?

 いやもう……僧侶じゃなくない?」


バルク「僧侶だ。祈りは拳に宿る」


魔術師(どんな宗教だよ)



戦闘終了。


剣士「あ、ありがとう?いや、助かったのは事実だが……釈然としないな……」


弓使い「宣言された瞬間の心のダメージがすごい」

魔術師「安心できる要素が『治る』一点突破なのどうにかして」


バルクは困ったように眉を寄せる。


バルク「怖がらせてしまったか?

 すまん。だが、生きて帰れた。

 それで十分ではないか」


冒険者たち

(……この人、根は良い人だよな……?

 根は……)



協会へ帰還。

受付嬢が駆け寄る。


受付嬢「ヘ、ヘルスニキさん!クレーム増えました!」

バルク「なぜだ!?

 ちゃんと宣言したぞ!」


受付嬢

「その宣言が怖いんです!!」


協会長が手を振り上げる。


協会長「君ね!!

 “叩く”じゃなくて、

 もっと柔らかい言い方はないのか!?」


バルク「……優しく殴る、では駄目か」


協会長「本質変わってない!!」


受付嬢(この会話の地獄感)



協会長は肩を落とした。


協会長「君が悪いわけではない。

 命を救っているのは事実だ」


バルク「ならば問題はないな!」


協会長「問題は山ほどあるよ!!!」



それから数日後の協会ロビー。

新人パーティは頭を抱えながらも、生還報告の手続きをしている。


受付嬢(やっと文句少なめで終わった……)

(※“少なめ”であって“無い”わけではない)


バルクは拳を握りしめ、真っ直ぐに言った。


バルク「拙者はもっと上手く治せるよう努力する。殴る回数を……減らせるように」


新人A(努力の方向が不安)

新人B(たぶん当分減らない)

新人C(精神科の導入を強く希望)


その時――


背後から、静かな声。


「素晴らしい救済でしたわね」


全員が振り返ると、

白い法衣に身を包む美しい少女が立っていた。


少女「力で癒す……あれこそ真の治癒。

 私は深く感動いたしました」


バルク「おお!分かるのか!?」


少女は恭しく会釈しながら微笑む。だが、どこか瞳が輝きすぎている。


少女「ぜひ、あなたの慈悲を……間近で学ばせてくださいませ」


新人ABC

(((やべぇの来た!!)))


受付嬢

(((理解者が来た!いや最悪の意味で!!)))


少女は胸に手を当て、名乗った。


少女「フィオナ・ルシエル。

 治癒士派遣協会所属、女神官ですわ」


その瞬間バルクは確信した。


新たなる筋肉仲間が現れた、と。


バルク「見込みあるな!

 拙者が鍛えてやろう!」


フィオナは頬を赤らめ、うっとりと呟く。


「殴って……導いてくださいませ♡」


新人ABC

(((これ……感染するタイプの脳筋だ!!)))


受付嬢、青ざめながら宣言。


「次の救援任務は……

 お二人で行ってくださいね……!」


バルク「任された!!」


フィオナ「光栄ですわ♥」


協会職員たち

(((地獄の始まりだ……)))


次回――

筋肉僧侶と狂信女神官、爆誕。

世界はまだ、彼らの本当の恐怖を知らない。

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