第13話

「何かのトラブル?」

「いや、契約内容が変更になっただけ」


 クライアントの電話を切った楢崎は、すぐさま手帳に何やら記入している。


「あっ!! ミックスフライ定食!!」

「……ホントだ」


 原と楢崎の昼食は、今日の日替わりランチのミックスフライ定食のようだ。

 原は既に完食に近いが、絶品のエビフライとサラダだけ残してるところを見ると、好物は一番最後に食べる派らしい。

 楢崎は仕事の電話をしていたからなのか、殆ど手を付けてない状態。


「うちらがカウンター行った時はもう無かったんだよね」

「そりゃあ、残念だったな」

「メンションしてくれたらよかったのに」

「じゃあ、次ん時はメンションしてやるよ」

「絶対だよ?!」


 原は女性関係はチャラいけれど、こういう友情には意外と厚い。

 毎回の同期会の場所取りもスケジューリングも、ほぼ彼がしてくれている。


「GW、どこか行ったの?」

「俺は男友達三人と二泊三日で台湾」

「えっ、台湾? いいなぁ~」

「篠田は?」

「私は姉の結婚式で沖縄に行って来た」

「えー沖縄いいじゃん」

「聞こえはいいけど、ほぼ従妹の子の子守だったから」

「あぁ、それはつらっ……」

「楢崎は?」

「……友達とサーフィン」

「サーフィン出来るの?」

「馬鹿にしてんの?」

「いや、インドア派のイメージが強くて」

「スポーツは結構何でもするよ」

「へぇ~、意外だね」


 私を除いて三人で会話が弾む。

 これも、ほぼいつも通り。


「あっ!!」


 突然楢崎が声を張り上げ、入口の方を指差した。

 思わず、その方向へと視線を向ける。

 けれど、これと言って特別何かがあるようには見えない。


「俺、仕事あるからもう行くわ」

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