第11話
GWの連休明け。
大手企業の本社勤務ということもあり、連休のお土産を色んな部署の人から貰う。
「鮎川さん、これよかったら」
「……ありがとうございます」
「来週あたり、休みになるよね?」
「……え?」
経理部は、月末月初は忙殺期間で休み返上というのを知っている他部署の男性スタッフ。
平日に振り替え休日を申請することを承知の上で声をかけて来たようだ。
さりげなく視線を降下させ、ネームプレートで部署と名前を確認。
資材部・
何度か声をかけて貰ったような記憶はある。
「仕事が落ち着く頃かと思って。よかったら、映画でもどう?」
「あっ、樋口、お前抜け駆けずりーぞ」
休憩スペースの自動販売機で飲み物を買おうとしていた私の前に、もう一人の男性が現れた。
資材部・
似たような背格好で似たようなスーツ。
同じ本社勤務とはいえ、巨大ビルで働いているから、どの人も同じ顔に見える。
顔認証のスキルは小学生並みだし、友好関係を結びたいとも思わない私は、男性データをインプットするというスキル自体を自動削除している。
「ごめんなさい。友人と出掛ける予定を入れているので」
「そっかぁ。じゃあ、また都合がつく時に」
「……はい」
都合がつく時だなんてあるわけない。
友人と出掛けるというのも嘘。
社交辞令で会話することはあっても、休日にわざわざ自由な時間を費やすくらいなら、風邪で寝込んだ方がマシだ。
「樋口、十連敗。いい気味だぜ♪」
「うっせーな」
え?
私、彼から十回もお誘い受けてたの??
“次こそは!”と拳を高々と掲げながら部署へと戻っていく樋口さん。
誘われた記憶すらなくて、ほんの少し罪悪感を覚えた。
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