第2話

「こ、これ、落としましたよ……!」





こんなことなら声をかける前にICカードに記載されている名前をしっかりばっちり確認しておくんだった。今、それを持つ手に視線を落とすことなんてできない。だってもう、この人のこの綺麗すぎる顔に視線も心も奪われちゃったんだもん。





「……あぁ、どうも」





甘い顔立ちとは裏腹に、低くて冷めた声が降ってきたのも、もうそんなことどうでもよくて。私の手からスッと黒いレザーを受け取って、見惚れるわたしに構わずそのまま歩いていってしまおうとするから、反射的に腕を掴んでしまって、それで。




脳が考える前に音になって口から飛び出したのは、初めてのことだった。





「好きです!!!」





それもまぁ、脳みそを通していないからか音量の調整すらできずかなり大きな声になってしまったらしい。私の瞳はずっきゅんして目の前の超絶イケメンに向かったままだけど、わたしの突拍子のない言葉に周りの目線が一斉にこちらを向いたのを肌で感じた。




そして、わたしのときめきラブコールを聞いたであろう目の前の黒髪イケメンは、さっきまで以上に思いっきり整った顔を歪ませて、冷めた低いトーンで、一言。

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