第2話 悪役令嬢は接遇もぬかりない
お父様とお母様にはたいそう泣かれたが、王子の命令に逆らう訳にはいかない。
私は、希望通り南の辺境伯のところに追放されることになった。
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馬車で長時間揺られ、私は南の辺境伯──ルーカス伯爵の屋敷に到着した。
そこは、うっそうと茂る森の中の小さな館だった。
扉を開けると、辺境伯のご夫婦と、息子らしき方が迎え入れてくれた。
ここでの人間関係でも失敗する訳にはいかないので、礼儀正しくあらねばなるまい。
「はじめまして、ビアトリス・ダルマニャックと申します。ご迷惑をおかけすることも多いでしょうが、どうぞよろしくお願いいたします」
この日のために、貴族然とした格好はやめた。金髪縦ロールの髪はポニーテールにまとめ、前髪は目にかからないようにする。
華美なドレスではなく、落ち着いた色調の簡素な服で。
そう、昨今医療現場でもその必要性が叫ばれている──
「接遇」である。
接遇とは、接客業務時における客に対する接客スキルのことだ。
王都の屋敷にいる時は、侍女にされるがままの令嬢らしい格好をしていた。
しかし、ここは信頼関係がものを言う場面。
相手に不快感や威圧感を与えない見た目こそが、求められている。
当然、私は院内の接遇マニュアルも全部暗記していたので、ぬかりはない。
「ようこそ、ビアトリス様。よろしくお願いしますね」
ルーカス伯爵夫妻は、お二人とも優しそうな人だった。
ひとまずの信頼関係──ラポールの形成には成功したらしい。
まあ、私にかかればこんなもんである。
──しかし、それは誤算であったことを、その後思い知らされるのだった。
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