悪役令嬢ですが、元医者だし追放されても診療スキルで成り上がる!

春生直

第1話 悪役令嬢、追放される

「侯爵令嬢ビアトリス・ダルマニャック!度重なる悪事のため、君との婚約を破棄する!」


私ーービアトリスは、産まれついての豪華な金髪縦ロールを揺らし、猫のように大きな青い瞳を細めて、前世のことを思い出していた。


☆☆☆☆☆


転生する前、私はとある病院に勤める医者だった。


医者の仕事は激務である。

眠れなかった当直明け、ぼやけた頭で信号を渡っていたらーー

トラックに轢かれて、死んでしまったのだった。


その時、薄れゆく意識の中で思った。

ーーああ、他人の期待に応えるだけでなく、もっと好きに生きたら良かった。


☆☆☆☆☆


そして目が覚めたら、この侯爵令嬢ビアトリス・ダルマニャックの身体に転生していたのだった。


ここが生前プレイしたことのある乙女ゲームの世界だ、と気付いたのは、5歳の時だった。

この国の王子、フレデリック・アヴェーヌと婚約したのである。


その名前にどうも既視感があって、記憶を辿るとーー

どうも、激務で疲れ果てていた前世で、その当時はまっていた乙女ゲームの攻略キャラクターらしい。

そして、ビアトリス・ダルマニャックとはーーそこで婚約破棄の上、主人公に追放される、悪役令嬢だったのだ。


それに気付いてからというもの、追放されたくないので、堅実に生きてきたつもりだった。

しかし、やはり16才の夏、主人公キャラが現れて濡れ衣を着せられ、追放されることが決まってしまった。


「せめてもの温情だーーどこに追放されるか選ばせてやろう」

フレデリック王子が、主人公を右腕で抱きしめながら言う。


私は悪役然と高らかに笑って、こう言った。

「オーッホッホ! それであれば、薬草の取れる南野辺境に飛ばしてください」

不景気を経験した親に、手に職をと言われて育ったのだ。

元医者のスキルを活かして、今度こそ堅実に生きてみせるっ!


そして、いつかこの勘違い浮かれ王子を、ぶちのめす。

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