12月26日

古間木紺

12月26日

「タッツミー、残念だけど俺は明日も仕事なの」

「中日のクリスマスってつれぇ」

 達海はため息とともにそのままベッドに倒れ込んだ。せめてもう一度だけと、誘うように惣一郎を見上げてみるが、先ほどまでの雰囲気から覚めているのかいつも通りだった。

「正確に言えばクリスマスイブじゃない? あ、でも日付超えたか」

 いかにもな恋人イベントが好きな達海と惣一郎は、今年も満喫する予定だった。クリスマスイブの夜は恋人と過ごして、クリスマスの朝に恋人の寝顔で迎えるような、そういう。一緒に住むようになって数年経っても、毎年楽しんでいた。

 けれど、今年は状況が違った。今日は水曜日で明日のクリスマスは木曜日と、平日仕事、土日休みの惣一郎にとっては、存分に楽しめない日程だった。

「タッツミーと過ごすクリスマスは大好きだよ」

 脱ぎ散らかした服を集めながら、惣一郎が言う。そりゃ、そうだよな。達海は胸元につけられた痕跡を見つめた。惣一郎とてこれ以上したくなかったわけではない。これはその証左でもあり、日々の愛の証拠でもあるのだろう。

 しかし当の本人は、達海のスウェットを手にして、こちらに渡してきた。着ろということなのだろう。今夜はお開きだとも。

「……仕方ねぇな」

 分かってはいる。分かっているから、仕事と俺のどちらが大事かなんか聞かないのだ。けど、確実に物足りなかった。

 不貞腐れて、渡された物だけを身につけていく。スウェットと下着だけであぐらをかいていると、すっかり元通りの惣一郎が隣に腰を下ろした。達海の腰に手を回し、頭を肩にこてんと倒す仕草つきで。

「金曜日、楽しみにしててね。続き」

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12月26日 古間木紺 @komakikon

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