第44話 世界が違っても

ナガレに、最大限のお礼を言った翌朝8時、あたし達は冒険者ギルドに来ていた。


西の大陸は、レンガを中心にしていたが、こっちは主に木材を使用していた。


中へ入って見てみると、使っている材料が木材に変わっただけで、殆ど同じ配置になっていた。


空いてるカウンターを目指し歩いていると、賑わっていたホールが、徐々に静かになっていった。


いつものように、鬱陶しい視線が飛んでくるが、最初に比べれば大分慣れたもんだ。


受付嬢とも視線が合い、あと少しで着こうとした時に、真横から男が、明らかにわざと割り込んできた。


男はそのまま話し始めたが、あたしは相手の襟元を掴み、誰もいない所へ放り投げた。


あたしは何もなかったかのように、受付嬢に話しかけた。


「昨日、この街に来たばっかりなんだ、なんか良い依頼ねぇかな?」


受付嬢は頬を赤く染め『はい』と言ってギルドカードの提示を求めてきた。


あたしがギルドカードを受付嬢に渡すと、後ろから先ほど放り投げた冒険者が、怒鳴りながらやって来た。


「てめぇ!余所者が良い度胸だな!ここでの上下関係をわからせてやろうか!」


男の台詞で周りにいた数人の仲間達も、一斉に立ち上がった。


あたしは無視をして、受付嬢との会話を楽しんでいた。


「じゃその依頼ーー」


「シカトしてんじゃねえ!このアマが!!」


男に話の邪魔をされたことで、あたしは受付嬢に『ちっとごめんよ』と言い、彼女の耳を魔力で塞ぐようにしてから、シズクに『吠えろ』と指示を出した。


ワオォォォォーーン!!


ギルド中にシズクの【咆哮】が響き渡り、絡んできた男達や無関係な奴らも、まとめて能力によって動けなくなっていた。


受付嬢が『いったい何が』とオロオロしていたが、あたしが『黙らせた』と言って納得してもらった。


さっきの邪魔された依頼の話を、受ける事を伝えた。


「受理しますので少々お待ち下さい」


あたしは待っている間に、ホールの状態を見渡した。


殆どの奴が気絶しているか、恐怖でこっちを見ていた。


絡んできた男達は、まともにくらったことで、気絶したうえに失禁までしていた。


「ギルドガードの方も、こちらの大陸仕様の物を用意しましたので、今までのカードはこの大陸では使わずに、新しい方を使ってください」


手続きが終わり、新しいギルドカードを受け取った後、あたし達は今回の依頼、Bランク魔物のギガントコカトリスの討伐に向かった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ギルドマスターSide


その日の儂は、午後からの仕事に向けての準備を終え、休憩がてらお茶を飲もうと立ったときに、それは起きた。


ワオォォォォーーン!!


下の階から魔物の遠吠えが響いてきた。


その瞬間、恐怖の感情が沸き上がり、動くことが出来なくなっていた。


こ、これは!?上位の魔物が使う【咆哮】じゃと!!


なぜじゃ?ギルドの中でこのような····


儂は意識を保つだけで精一杯であった。


しばらくすると【咆哮】の効果が切れ、動けるようになった。


儂は急いで下の階に向かった。


そこは、恐怖に怯えている者や気絶した仲間を介抱している者、そのまま床で倒れている者だけだった。


儂はホールが血の海になっていなくて安堵した。


「あ、ギルドマスター」


呼ばれた方を振り向くと、ただ1人平然としていた受付嬢のリサがいた。


この惨状の事を聞いてみると、2人組の、西の大陸から来た冒険者の従魔によるものだと判明した。


詳しく聞いてみると、騒動の発端は、ここの問題児冒険者が2人組に絡んだのが原因だとわかり、他の者達はただ巻き込まれただけと分かった。


その2人組の居場所を聞いてみると、どうやら今、ギガントコカトリスの依頼を受けており、今はいないという。


「いったい何者なのじゃ?」


儂は彼女達が戻ってきた後の事を考え、頭が痛くなってきた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


忍Side


依頼を受けたあたし達は街の外に出て草原を走っていた。


今回の内容は、普段ならEランクのコカトリスの依頼のはずだったが、受けた連中の報告で居るはずのない、ギガントコカトリスが複数羽、確認され急遽Bランクに上がったみたいだ。


しかも昨日、ゴブリンから助けた冒険者達の報告らしい。


1時間かけて目的の森に到着したあたし達は、森の入り口で休むことにした。


休んでる間に【万能探知】を使い位置を確認した結果、複数体の群れを2つ見つけた。


いつものように【鑑定】も組み合わせ、片方がコカトリスと分かった。


ゴブリンが50匹位は居るな。


今回の依頼はギガントコカトリスだ、無駄にやる必要はねぇだろ。


あたしが考えていると、ナガレ達も気づいたようだ。


「····嫌な匂いが混じってるな」


「くぅ~」


『臭い』


「フンス、ク~ン」


シズクは鼻を擦ったり、首を横に振り『イヤイヤ』していた。


「ちっと離れたところに、ゴブリンがいるな。今回はそっちは無視だな。帰ったら報告すれば良いだろ」


「その討伐に参加するのか?」


嫌そうにナガレは聞いてきた。


「いや、やらねぇよ。あたしらは明日、あの街を出てくさ。目的の場所が分かってんのに、いつまでも居たくねぇだろ」


ナガレ達も納得したところで森に入ることにした。


コカトリスまで一直線の道を進んでいると、たまにゴブリンとも遭遇した。


ゴブリンごときで道を迂回するのも、バカらしいから気にすることなく、蹴散らしながら進んだ。


目的地に到着するとやたらと、ゴブリンの死体や石像が増えてきた。


コカトリスとゴブリンで抗争でもしてんのか?


懐かしな。


あたしも早く日本に戻って、あやめ達と一緒にどこかのチームとやりてぇな。


思い出に浸っていると、コカトリスの巣を目視できる距離になってきた。


「ギガントコカトリスが今回の目標だからな、普通のコカトリスは2、3羽くらいでいいからな」


「で、どうやるんだ?」


「ナガレは、石化防げるか?」


「前の我なら無理だろうが、今なら余裕だ!問題ない」


「なら丁度6羽居るみてぇだからな。3:3でどうだ?」


ナガレは承諾し、アカツキ達には普通のコカトリスを頼んだ。


それぞれが行動を開始した。


眠っていたコカトリス達は一斉に鳴き出し、ギガントコカトリスも姿を現した。


あたしは久々に血刀包丁を使い、ギガントコカトリスの首を切り落としていった。


あたしが倒し終わる頃には、ナガレもきっちり3羽倒し、マジックバッグに入れていた。


だが、1羽は入らなかったようだ。


ナガレが持ってるバッグは荷馬車2台分だ、明らかにギガントコカトリスは、1台はみ出す大きさなのだから、精々2羽がやっとのはずだ。


あたしは残りの1羽を回収し、アカツキ達が狩ってきた4羽を仕舞った。


1匹多かったがちゃんと綺麗に狩ってきたので、2人の頭を撫でることで労った。


「じゃ、街に帰ろうか」


戦闘に30分もかかってねぇからな。


お陰で、街に着くのは12時過ぎくらいか、昼飯何がいいか?


「ナガレ達は昼、何がいいよ?」


「くぅ~ん」


『肉~』


「キュイ~ン」


シズクは頭を擦り付けながらしっぽを『ブンブン』させていた。


「シズクはアカツキと同じだと言っている。我もだ!肉だ!!」


「じゃ今回もナガレの鼻頼りだな」


ナガレは『任せろ!』と力強く言い、先に走っていってしまった。


あたしは笑いながらアカツキを抱き抱え、シズクと一緒に追いかけた。

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