第45話 最優先

ギガントコカトリス討伐依頼を終えたあたし達は、サツマ冒険者ギルドに来ていた。


カウンターには、担当してくれた受付嬢がいた。


「てっきり出発されたかと思いましたが、これから出発ですか?」


「なに言ってんだ?終わったから帰ってきたんだが?」


受付嬢は笑顔のまま『え?』と言い、次の瞬間には『えええええ!?』と驚き叫んでいた。


ホール内では『おい!あれってさっきの?』『え?もう戻ってきたの?』と早すぎる帰還にざわめいていた。


「広い解体場はあるか、思ったより数がいたからさ。狭いと出しきれねぇよ」


「えっ!?でも手ぶらじゃ······」


ナガレに視線を送ると、彼女がバッグを持っていたことで察し、すぐに行動してくれた。


数人の受付嬢が手分けして、報告と手配に走り出した。


担当してくれた受付嬢が解体場に案内してくれることになった。


最初に案内してくれた場所では、狭かったため、倒した数を言うと『何を言っているの』みたいな顔をされた。


だが彼女もプロなのか、すぐに正気に戻り、訓練所に連れてこられた。


「ここなら大概は収まるはずです」


鼻息を『フスー』とさせながら、言いきってきた。


ナガレから出し始めると、招集された解体担当の職員達がやって来た。


「おーすげー、ギガントコカトリスかよ。何体あるんだ?」


解体のおっちゃんが笑いながら言ってきたから『6羽だ』と言ったら、『マジかよ』と引きつった顔になっていた。


「並べて出せばいいか?」


「あ、ああ」


どうやらまだ、飲み込めていないらしい。


「あと、普通のヤツ4羽あるんだけどさ、先にこっち頼んでいいか?肉と骨を持って帰りてぇんだ」


おっちゃんは承諾し、若い2人に割り振った。


「どんくらいで終わりそうだ?あたしら明日にはこの街出てくんだが?」


「そうなのか、なら今日中に終わらせとくからよ、明日の朝受け取ってくれ。こっちも肉だけか?」


「いや、全部売りでよろしく」


おっちゃんは『伝えておく』と言い作業に入っていった。


そこへ、背筋は伸びている白髪で白ひげを生やした老人がやって来た。


「お前さんらが、朝方暴れていった奴らじゃな」


「何言ってんだ?あたしら暴れてはいねぇよ?」


何言ってんだこのジジィは?


「お前さんからしたら、そうかもしれんがな、世間一般ではな、あれは暴れたって言うんじゃよ」


「んで、ジジィあんたはなんなんだ?」


「そうじゃったな。名乗ってなかったな。儂はここのギルドマスターをしておる、シマムラ・ジンじゃ」


お!そういえば、この国に来て初めて、自己紹介されたな。


とうとう、名前も日本っぽくなってきたな。


「そうか、あたしは結城 忍だ」


あたしはこの世界に来て人間相手に、初めて本名を名乗った。


ギルドマスターも多少驚いていた。


「はて?お前さん西の大陸から来たんじゃなかったのか?それとも元々この大陸出身じゃったのか?」


「どっちだっていいだろそんなのはよ。それよりよ、ギルドマスターなら言っときたい事があんだけどさ」


「ここでもなんじゃ、ギルド長室で話そうではないか」


「ちっと待ってくれ、まだコカトリス、全部出してねぇから、出しちまうわ」


あたしは残りのコカトリスを出してからギルド長室でゴブリンの報告をすることになった。


その際、ギルドマスターは『本当に何者なんじゃ』と呟いていた。


ギルド長室に入り、ナガレと一緒に3人用のソファーに座った。


アカツキはあたしの太ももの上に座り、シズクは頭だけをナガレの太ももに乗せていた。


ギルドマスターは自分の椅子に座ってから『話を聞こう』と言ってきた。


あたしはまず、探知系のスキルが使える事を伝え、森の入り口で確認したことを話した。


コカトリスの位置と、離れた所にゴブリンの群れが50以上、居たことを話した。


次を話そうとしたら『ちょっと待っとくれ』と言ってきたが『最後まで話を聞け』と言って黙らせた。


コカトリスの巣に向かう途中にも数匹のゴブリンと戦闘になったこと、巣に近づくにつれて、ゴブリンの死体や石像が増えていった事を話した。


「そんでもって、ギガントコカトリスを倒して今の状況って訳だ」


話が終わる頃には、ギルドマスターは額を手で被っていた。


「ゴブリンの群れにも、もちろん驚いてはいるのじゃ。じゃがそれ以上に、お前さん達の強さの方が衝撃的じゃ」


「話はこれだけだ。じゃあな」


あたし達が立とうとした時に『待っとくれ』とギルドマスターに止められた。


「お前さんらも討伐にーーー」


あたしはギルドマスターが言い終わる前にソファーから立って言ってやった。


「わりぃが、あたしら明日には、この街を出て行くんだ。討伐には参加はしねぇ」


「そこをなんとかならんじゃろうか?報酬ならちゃんとーーー」


「金には困ってねぇから、報酬をいくら上げてもかわらねぇよ。それにあたしには、何をおいても最優先にする目的がある」


「そ、その最優先を聞くことは、可能じゃろうか?」


あたしはギルド長室の扉を開け、3人を廊下に出してから、ギルドマスターを見て言った。


「故郷に帰って、こんなあたしを待ってくれてる、大事な奴に会うことだ」


そう言ってギルド長室を後にした。


訓練所に戻ったあたしは、解体し終わった、コカトリスの肉と骨を回収し、ホールに戻った。


戻ったあたしは、担当してくれた受付嬢を見つけて、明日の朝に報酬を取りに来ることを、伝えてからギルドを後にした。


外に出ると、早速ナガレが吠えてきた。


「我はちゃんと我慢したぞ!早く肉を食いに行くぞ」


「わかったって、後はナガレの好きにして良いからさ、うめぇ飯屋頼んだぞ」


「任せろ!」


あたしは、アカツキを抱き抱え、シズクと一緒に、鼻を『スンスン』させて、どんどん進んでいくナガレを、見失わないように追い掛けて行った。

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