第12話 忍は耳としっぽに癒される
あたしはオークキングを倒し終え、ルカールに帰る街道の途中で、ギルドマスター率いる冒険者達と遭遇していた。
「シノブ!倒したとはどういうことだ?」
「あぁ?そのままの意味だが?」
「そうでは······なくてだな」
ギルドマスターはため息をつき軽く説明をあたしに話し始めた。
要は時間の辻褄が合わねってことか?
「ちと本気で走ったとしか、説明できねぇよ」
「走ったってお前な······なら証拠は何かないか?何も持っていないようだが?」
助言をくれたシビルには悪いが自重はやめたんだ。
ここでキングをだすか。
「今出すからさ。離れてくれ」
ギルドマスター達が離れるのを確認し、あたしは【収納】からオークキングを出した。
その瞬間、『マジか!』『おおおぉぉぉー』『すげぇ~』『ひっ!』と様々な反応が返ってきた。
「他のも出すか?」
「いや······それはいい、ところでシノブはそれをどうするつもりだ?」
「あたしはキングと持っていた武器をもらう。他はそっちで分配してくれ。報酬も元々に加えてキングの素材分だけでいい」
あたしはオークキングを仕舞い、先にギルドに帰ることを伝えた。
「じゃ···オッサン、あたしは先に帰ってるからな」
「ちょっと待て、シノブ!」
あたしは話を聞かず、瞬く間に走り去って行ってしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドマスターside
あー、くそ!なんでアイツは人の話を聞かんのだ。
俺は額に手を当て、どうするか考えた。
「ギルマス、これからどうします?」
『狼の牙』のリーダー、バキが話しかけてきた。
「そうだな·········シノブはああ言っていたが確認をしに行かんとな。他の奴らに伝えてくれ。報酬は提示した額を払うから最後まで付き合ってくれと」
「わかった········それにしても、あのシノブとか言う奴何者だ?あんなデタラメな奴、今まで聞いたこともないぜ」
『俺もそれが知りたい』と忍が走り去っていった方向を見ながら呟くギルドマスターであった。
てか、アイツ···マジで早すぎるだろ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
忍side
ギルドマスターと別れたあたしは、行きと同じく30分ほどで門に到着した。
ギルドカードを門番に提示し、冒険者ギルドを目指した。
ギルドに着き扉を開けてみると、待機していた冒険者達とギルド職員は緊迫した空気に包まれていた。
あたしは空いているカウンターを探していたら、犬人族のアンリを見つけそこへ向かおうとした。
丁度アンリもあたしを見つけ『シノブさん!』と叫び、こちらに来るように腕を振り急かしてきた。
その際、ギルド内の緊迫した状態は一旦落ち着き、静けさだけが支配した。
静まり返ったギルド内をあたしは堂々と歩いていると、周りから『誰だ?』『討伐に出てたんじゃ?』『美人でカッコいい』など聞こえてきた。
もちろんその中にはあたしの機嫌を損ねる声も混じっていた。
『へへっ、いい女だな』『囲っちまうか』などの呟きに対して忍は【万能探知】で見つけだし即座に【威圧】を叩き込み黙らせた。
何人かが倒れ騒がしくなったが、そのまま、アンリの元へ向かい話しかけた。
「アンリさん、今戻った」
「戻ったじゃありませんよ。シノブさん!オーク討伐に向かわれたんじゃなかったんですか!?シノブさんを追いかけてギルマスも向かわれましたが会いませんでしたか?」
困って、おろおろしてるアンリもいいな。お陰で、さっきまでのイライラも治まってきたな。
「聞いてるんですか!シノブさん!」
アホなことを考えていたら怒られてしまった。
「わりぃわりぃ」
あたしは改めて今回のことを周りにも聞こえるようにいい放った。
「オッサンとは途中の草原であったな。あとブタどもは、全滅させてきたぞ!」
「えっ?·········ええええーーーーーー!!!???」
「「「···········はあああああーーーーーーー!!!???」」」
ホール内は驚きの悲鳴で包まれた。
それに対しあたしは、耳を塞ぎ冒険者側へ向き、『うるせぇっ!!』と軽めの【威圧】を叩き込み、ホール内は静かになった。
アンリもあたしの一喝で我に返った。
「すみません、シノブさん·········」
アンリはしょげてしまい、耳がペタンとなった。
ああああああああーーーーーーー
その耳、カワイすぎるーーーー!!
あたしの内面は、凄まじいことになっていたが、外面は笑いながらいい放った。
「アンリはカワイイから、なんの問題もない!!気にすんな」
あたしの突然の言葉にアンリは顔が赤くなり、耳がピーンとなり、おろおろしだしてしまった。
「なっななな!·········からかわないで下さい!」
アンリは耳としっぽがピーンとなってそっぽを向き、あたしは笑っていた。
それを見ていた、一部の職員と冒険者の女性陣は、『『尊い』』と呟き暖かい目で見守っていた。
「それとアンリさん、ここって広い場所·········解体できる場所ってあんの?」
突然、あたしが真面目な話をしてきたことで、アンリは『ゴホン』と咳払いをして応対した。
「もちろんありますよ。今から向かいますか?·········でもシノブさん何も持っていませんよね?」
「ああ、登録の時に言わなかったが、あたし【収納】が使えんだ。そこにオークを入れてきた」
「ちなみに·········何体ほど?」
「50以上だ!」
『ごっ』とアンリはいいかけたが、先ほどの騒動を思い出し、咄嗟に口を押さえることができた。
その話を聞いていた、他の職員と冒険者達も一斉に口を押さえるという光景がギルドで起きていた。
アンリは落ち着いて息を吸い冷静になった。
「でっ····では案内しますね」
落ち着いたと思ったがそうではなかったようだ。
あたしは笑いながら『頼むよ』と言い、アンリの後を着いていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドマスターside
俺達は忍の証言を確かめるために、あれから1時間掛けて、昨日、斥候に出した冒険者の案内で、オークの集落にたどり着いた。
「ギルマス、ここがそうです」
「ご苦労さん」
俺は案内をしてくれた冒険者達を労い、残りの冒険者を集め指示を出した。
「二手に分かれるぞ!まず、土魔法が使える奴は集落の中心に大きな穴を掘ってくれ。あと、各パーティー2人ずつ出してくれ。メンバーが減った所と人数が少ないところは1人でいいから、周りの柵と燃える残骸を中央に運んでくれ。残りは集落周りの偵察だ。終わったら片付けの手伝いだ」
俺は指示を伝え終え、集落に入りすぐに違和感を覚えた。
なぜだ?どうなっている?
違和感を考えていると数人の片付けをしていた冒険者が異変を伝えてきた。
「ギルマス、明らかにおかしいです」
「ああ、俺も思っていた。こんなことはあり得ない」
俺は異変に気づいた冒険者達と、集落を見て回り、途中作業をしている奴に気付いたことがないかを聞いて回った。
一通り見て回り中央に戻って、異常さを考えた。
「俺は鼻には自信があります。なのでこの惨状は不気味でしかありませんよ」
俺に報告に来たのは、犬の獣人だったのだ。
「俺も同感だ。なぜ、どこにも血痕がないんだ。少なくともシノブに見せてもらったオークキングは、一目見て悲惨な状態だっ·····た」
「ギルマス?」
なぜ俺はあの時気付かなかったんだ!あんな状態で血の1滴すらも流していなかったことに!
「シノブ······お前はいったいなんなんだ?」
残骸を片付けている冒険者を眺めながら黄昏ていた。
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