第11話 【完璧投影】発動
「おいブタ野郎、さっきまでの威勢のいいツラはどうした?」
オークキングは、けしかけた配下が一瞬のうちに殺られてしまったことで、完全にあたしに対し、恐怖を抱いてしまった。
「おいおい!?ブルッちまったか?」
あたしは両腕を広げ、薄ら笑いをしながら、オークキングに近づいていったが、真っ赤な目だけは笑っていなかった。
配下を軽んじ、勝てない相手に、けしかけた行いがあたしの逆鱗に触れてしまったのだ。
オークキングは、殺気と恐怖に勝てず、一目散に逃げ出した。
あたしは呆気に取られてしまったがすぐさま追いかけた。
「逃がすわけねぇだろが!!」
容易く追い抜き、先に回り込んだ。
それに対し、オークキングはその巨体から急に止まることが出来ず、咄嗟に自身のスキル【咆哮】を使った。
『グガァァァァァァ!!!』
大気が震えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
キングside
『グガァァァァァァ!!!』
【咆哮】を使ったことで我は冷静さが戻っていた。
なぜなら、今まで遭遇した人間を含めた生き物は【咆哮】を使うと、どんな相手でも、硬直して動かなくなっていたからだ。
グガ!
我はそのまま人間のメスへ駆け出し、右手で持っていた、禍々しく巨大な肉切り包丁を振り下ろした。
ガアアアアアア!!
ドゴォォォォン!!!
辺りは土煙が舞い、人間のメスが立っていた場所は陥没しヒビが入った。
我は人間のメスの無惨な姿を想像し、大声で笑った。
グガガガガァァァ
だが、我は違和感に気づいた。
血の匂いが無く、肉切り包丁がピクリとも動かないのだ。
『おい!』
肉切り包丁を点になった目で見つめた。
『何、気色悪ぃ笑い方してぇんだぁ!!』
次の瞬間、右腕に激痛が襲い、胴体の衝撃で数10メートル離れていた小屋まで、吹き飛ばされていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
忍side
グガァァァァァァ!!!
お?最後の悪あがきか?
あたしはオークキングが【咆哮】を使ったことに、まるで気付いていなかった。
当然である、全く影響がなかったのだから、あたしは只の威嚇だと思った。
だがそこで突然、あたしの頭に合成で作ったような声が響いてきた。
『【完璧投影】発動、スキル【咆哮】を覚えました』
なんだぁ!?
そこへオークキングが肉切り包丁を振り下ろしてきた。
あたしは咄嗟に【身体強化】を使い、左の指先で刃を掴み受け止めた。
ドゴォォォォン
あたしには全くダメージはなく、さっきの声のことを考えていた。
【完璧投影】が発動したのか?てこたぁブタ野郎の威嚇は、一応攻撃だったってことか?
色々考えていたときに、神経を逆撫でする笑い声が聞こえ、あたしは再度キレた。
「おい!」
あたしは肉切り包丁を離さないように尚且つ壊さないギリギリまで力を込めてから。
「何、気色悪ぃ笑い方してぇんだぁ!!」
オークキングの右腕を手刀で粉砕してから、胴体に掌底を叩き込んだ。
あたしの手には先ほどまで、オークキングが持っていたはずの、刃に少しヒビが入った肉切り包丁が、握られていた。
その大きさは刃渡り2メートル程もあり幅が約30センチ、そして柄が50から60センチと言ったところだ。
「それにしても、でけぇな」
あたしは一旦、肉切り包丁を地面に置き、吸血姫の身体能力を生かし、改めて柄を掴み軽々と片手で持ち上げた。
「吸血姫ってぇのは、改めてヤベぇな。全然重さ感じねぇわ······ハハっ」
あたし自身もドン引きし、人間をやめてしまったんだなと、実感して、乾いた笑いしかできなかった。
だが、持ち前の精神で『仕方ねぇ』と、前向きになり、肉切り包丁を肩に担ぎ、オークキングを吹っ飛ばした場所へ向かうのだった。
倒壊している小屋に辿り着くと、オークキングが仰向けで虫の息で倒れていた。
掌底で打ち抜いた胴体は陥没し、手刀で砕いた腕はあらぬ方向へ向いていた。
グゥガァァ
「ここまでだな」
そう思いあたしはトドメを刺すべく、肉切り包丁を振り上げ振り下ろしたが、頭に当たる、すんでのところで止めた。
「あぁ······素材か」
ここで前回の失敗を思い出し、肉切り包丁を【収納】し、新たに血のストックで《ベレッタ92》を作り。
「わりぃな、最後はてめぇの武器でトドメを刺してやるつもりだったが、てめぇの素材はたけぇみてぇでよ。これで勘弁してくれ」
《ベレッタ92》を構え、オークキングの眉間に血弾を撃ち、トドメを刺した。
あたしは【血操魔法】で血を抜き取ったオークキングと他のオーク達を【収納】にしまい
「さっさと帰っか」
帰路に就くことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドマスターside
シノブがギルドを出ていって約一時間、討伐隊の準備が整った。
「よし!出発するぞ!先に行ったと思われるシノブに追い付くために、少しペースをあげていくぞ!」
冒険者たちは各々、ギルドが用意した馬車に乗り込み、門を抜け、忍の後を追った。
俺は内心、機嫌が悪かった。
シノブのやらかしで準備には時間は掛かるわ、行く予定だった『鷹の爪』を再起不能にし、新たに人員を募集したが集まらず、俺自身が行く羽目になったのだ。
それから30分ほど時間がたった。
目的地はルカールの街から馬車でだいたい1時間の場所にある。
それなのに一向にシノブに追い付けないでいた。
流石に俺はおかしいと思い始めた。
その旨を今回参加していた、Bランク冒険者パーティー「狼の牙」のリーダーであるバキに話したが『どうせ逃げたんだろ』と忍をバカにし笑いだした。
それに俺は納得いかず、進行方向に視線を向け考え込んだ。
あの実力で逃げるとは到底思えん。
いったいどうなっている?
そんなことを考えていると、進行方向からこちらに向かって、接近してくる何かを見つけた。
「総員警戒!前方から何かが接近してくるぞ!!」
俺の号令で冒険者達は武器を抜き、警戒態勢をとった。
正体不明な物がどんどん近づいてきた、それはどうやら人のようで、なぜか手を振っているように見えた。
俺は思った。
まさか?あれはシノブか?
その予想は当たり、シノブと視認できる所で声を上げようとした時に、先にシノブが信じられないことを言ってきた。
「よお!オッサン!随分遅かったな。ブタどもなら、あたしが片付けたからさ、安心しろよ」
その言葉に、俺と参加した冒険者達は『『『はーーーーーー!!!???』』』と叫んだ。
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