第4話 絶望と優しさの抱擁。妹が見た秘密の姿

さらに翌週の土曜日の朝に、大きなニュースを見た。


私たちが住む町と遠く離れた県を結ぶ唯一の道路が壊れてしまった。壊れた範囲は1kmの長さだったため、”これから工事しても3年間は掛かる”らしい。しかも、”光元国ひかりもとこくの予算が足りない”からと工事をするという決断さえ、いつになるか分からないとのことだった。


工事現場を映すヘリのカメラ画面の端に、黒いマント姿の男が一瞬だけ映った。


「あいつだ。ランドブレイカーだ。今度こそ、逃がさない」


朝ごはんを急いで食べた私は、家の小さな庭であたりを見渡して、誰もいないことを確認した。


そして、青い大空に両手のひらを広げて、声を出した。


「Peace for this land この大地のための平和を」


わたしの上着とスラックスが光の粒子に変換されて消えて、スポーツブラとスポーツパンツだけの姿になった。

そして、光の粒子が並び方を変えて、わたしの新しい衣服になった。

それも動きやすい戦闘服でデザインも素敵だった。


「ランドフィクサー ~大地の修理屋さん~ 見参!」


わたしは神様から大地を修理するチカラを分け与えられた正義の女の子。


「さあ、現場まで飛んでいくわ」


その姿を見ていた人がいた。妹のアユ美だった。


アユ美は目を輝かせていた。


「おねえちゃんは、ランドフィクサー ~大地の修理屋さん~ だったんだ。

すごい、すごい、さすがー。おねえちゃん、素敵」


アユ美は、飛んでいくランドフィクサーの姿が小さくなって見えなくなるまで見送っていた。



1kmの長さ、1kmの距離と言うべき?で壊れた道路についた、ランドフィクサーこと美は絶望を感じた。

「な、なんてことなの。テレビのニュースでは、”お金さえあれば、3年で直せる”って言っていたけれど、絶対に直せないわ。


というか、どうやって、この道路を作ったのよ。光元国の技術者は、いいえ、50年前の唱和しょうわ時代にいた光元国ひかりもとこくの技術者は、どうやったのか想像もできないわ」


これが、わたしの正直な感想だった。


そして、私は、壊れたインフラ設備の大きさの前に圧倒されていた。

壊れた道路の大きさを定規で30cmとすれば、今まで直したトンネルや水道管は定規で1cmくらいに思えて来た。


いろいろと考えた結果、わたしは、修理できる勝率を判断した。


「今の光元国の技術では、修理できないかもしれない。

もし修理できるのだとしても、最短でも3年間なんて待っていられないわ」


そして、決断した。


「わたしが神様にもらったチカラで直すしかない。

でも、こんな大きなものを直すなんて、本当にできるの?

でも、やるしかない」


しかし、大きな不安もあった。


「途中でエネルギーが足りなくなるかもしれない・・・」


その不安を押し殺してでも、ランドフィクサーのチカラを使うべき理由があった。


「けれど、わたしが少しでも直せば、道路を修理するための難易度が下がるはず。

そうすれば、技術力が足りない礼輪れいわ時代の技術でも直せる可能性があがるはずだ。」


 わたしは、大きく息を吸い込んで、深呼吸した。そして、精神を統一して、普段よりも大きなちからを出そうと試みた。


距離1kmに渡った道路が壊れた場所の全体を見渡せるように、空高くに昇った。

そして、現場を視界の中に収めた。


わたしは、青空の太陽に右手のひらをかざし、左手のひらを壊れた道路に向けた。

「フィクサーズ、サンシャイン。 修理屋さんの太陽の光!」


まぶしい光を受けた老朽化した道路、おじいさんのように年を取った道路は、出来たばかりの若々しい力強いちからを取り戻した。


「これで、ふたたび、みんなが道路を通れるようになるわ。

でも、もう限界、空に浮かんでいられない。

お、落ちる。でも、悔いは無いわ。

だって、神様にもらったチカラで、多くの人たちの生活を助けることができたのだから・・・」


わたしは、気を失って、落ちていったのだと思う。



ランドフィクサーが空から落ち始めたとき、道路が崩れた場所の物陰から、なにかが飛び出してきた。


なにかは黒い影だった。

そして、空から落ちるランドフィクサーに向かって飛んで行った。


黒いマントの男ランドブレイカーは、落ちてくるランドフィクサーを優しくお姫様抱っこで受け止めた。


「ありがとう、ランドフィクサー。心配しなくていい。家まで送り届ける」




妹のアユ美が空を見上げると、近づいてくる飛行物体があった。


アユ美は、嬉しくなって、つい空に向かって、手を振った。


しかし、やって来たのは、黒いヘルメットと黒いマントひるがえした男に、お姫様抱っこされた、おねえちゃんだった。 

アユ美は、一瞬身構えてしまった。


男は、アユ美に優しく話しかけた。

「はじめまして、こんにちは。

俺の名前はランドブレイカーだ」


男の優しい雰囲気に安心したアユ美は、彼に質問した。

「ランドブレイカー? 

お姉ちゃん、ランドフィクサーの仲間なの?」


男は、嬉しそうに笑った。

「そうだな、早く本当の仲間になりたいものだな。

疲れて眠っているキミのお姉さんを休ませてあげたい。

部屋まで案内してくれないか?」


アユ美は、うなづいた。 

「こっちです」


アユ美に、家の中に案内されたランドブレイカーは、ランドフィクサー(こと美)をベッドに運んで、布団をかぶせると、すぐに、こと美の部屋を出て、玄関から家の外に出た。


「ありがとう、助かった。

家族の人は留守みたいだな。

戸締りをして、家の中にいるほうが良いな。

俺を信じて、家の中に入れてくれてありがとう。

でも、俺以外の男は家に入れたらダメだよ」


アユ美は照れながら答えた。

「大丈夫だよ。お兄ちゃん、ランドブレイカーさんしか入れないよ」


ランドブレイカーは嬉しそうに答えた。

「ありがとう。俺のことは内緒にしてくれよ」


アユ美は笑顔でうなづいた。

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