第5話
母と晩御飯を食べた次の日のことだ。一日中、本を読んでいると気になることを見つけた。
『なぜ、男女比が偏ったのか?』
そう書かれている本が本棚の上の方に収納されていた。もうある程度の漢字は読めるようになり、読書スピードも大きく上がってきている。
その本を手に取り、メイドのところに移動する。
そして、いつものように膝の上に座り、その本を読む。まず、最初に書かれているのは『男女比が1:5になった理由』だ。
「1:5?今の男女比って…?」
「1:10ですね。少々お借りしますね」
メイドは本を取り上げ、背表紙から本を読み始めた。
「この本は40年前のものですね。…なんでこんな本がここにあるのかは知りませんが、間違っている場所があれば修正しますね」
そう言いながらメイドは僕に本を返す。
(古い本なんだー!ワクワク)
古い本としてあげられるのは歴史書の方だった。歴史の戦国時代といったかっこいい本を想像していたのだ。
『ダンジョンが現れたのは2000年の頃だ。世界中が揺れ、この惑星である地球が崩壊しようとしていた時だ。世界中にダンジョンの入り口が現れた。以降、このことをゲートと表記する。日本であれば、ゲートは東京と兵庫の二ヶ所に存在している。世界中も都心部と人口の多いところに集中しているようだ。
そして、ダンジョンに潜る人たちが現れた。探索者だ。その人たち専用にダンジョンに行くための武器を作る生産職も現れる。ここからダンジョンブームが始まった。ダンジョンのアイテムを作り、売ることやダンジョンからドロップする魔石と呼ばれる石を使った発電といった。ダンジョンに依存した生活が始まる。
ダンジョンに潜る人は皆強く気高い人だった。当時の男女比は1:1だった。そしてダンジョンに潜る人は男性が多かったらしい。国で確認したのだからこれは事実だ』
「2000年の時には男女比が1:1だったってことだね?」
男女比について書かれているのは、この情報だけだ。残りはただ長く説明しただけの文だ。要約するとこうなる。だが、無駄ではない。必要だから書かれているのだ。
『ダンジョンが現れてからの第一子だ。いわゆる1次ダンジョン世代と呼ばれるものたちだ。他の子よりも圧倒的に強く、次の世代を任される子供が現れた。そんな子供が大きくなる2050年ごろ(ダンジョンが現れて50年後)のことだ。ある一つの王国でダンジョンの氾濫があった。
一体の悪魔が現れるとともに、その悪魔に従えられた魔物が現世に現れる。そう悪魔だった。全て国で協力をしなければ倒せないという悪魔が出た。ダンジョンの氾濫があるのはいつものことだ。だが、この氾濫は被害が大きすぎた』
「2050年にダンジョンの氾濫があって、被害が大きかったんだってー。知ってた?」
「ええ、知っていますよ。
「事実なんだ。氾濫?ってまだあるの?」
「ダンジョンの授業はありますよね?」
「あるけど、日にちが違うから……」
「それなら、これからお家で勉強しましょう。ダンジョンの氾濫ですが、ここ数年は起きていませんね」
「それなら、安心して過ごせるね!」
ホッと息を吐き出しながら安心する。悠里が住んでいるのは、ダンジョンがあるとされている東京近辺だ。もしダンジョンの氾濫があるのなら、被害を受けてしまう。そのため、少し緊張してしまったのだ。
視線を再び、本に戻す。
『その出てきた悪魔はこう告げた。「私は魔王だ。お前たち人類を滅ぼし、この世界を治めるものなり」と。世界中からその野望を阻止するために、人々は立ち上がった。そして始まる第一次魔王討伐戦
——だがそれは失敗した。
立ち上がった人々を置き去りに、国の軍隊が動いた。その結果は悲惨そのものだった。空を支配するヘリコプターは空を牛耳る魔物に破壊され、陸を支配する軍隊はその巨体を誇る魔物に破壊された。その後、ダンジョンに行っている者たちに協力してもらったのだ。
そして始まる第二次魔王討伐戦が始まった。その魔王討伐戦は成功してしまった。この成功がのちの悲劇につながる』
「魔王って強かったんだねー。憧れるな〜」
悠里は歴史人物を見て自分も強くなりたいと思うお年頃の男の子だ。だからこそ、そんなことを口にしてしまう。
「それは外で口にしてはいけませんよ」
「はーい」
と簡単に返事をするのだった。この魔王討伐戦の影響で亡くなった人もいるのだ。その先祖が魔王になりたいと言う者を許すはずもない。だから、外では話してはいけないタブーとされている。
『その悲劇とは、呪いだ。剣が何本も腹に刺さり、死にそうになっているそんな死に際に魔王はこう言った。「男は皆死に、男が生まれない世の中を作ってやる。何年いや何万年後にまた蘇ろうではないか。その時にこそ、世界を我が物にしてやる」と。
魔王から放たれた邪悪なる思念は世界中へと飛んでいく。一週間の間、世界の空は闇に包まれた。男は心臓を押さえ苦しみながら倒れ込み、息絶える。それが世界中のあちこちで発生したのだ。
男の人口がこの時半分に減った。さらに技術者も無差別に殺されたことで、世界の歴史の数十年分が戻ってしまう。これがダンジョン史の喪失事件の全容だ。』
「…ダンジョン史の消失事件?」
「世の中が衰退したってことですね?理解できます?」
「んー。よくわからない」
「たとえば、この携帯電話がありますよね?その携帯電話がなくなると言った物です」
「!それはダメだよ。勿体無い」
少し感想はずれているが、概ね正しいことは理解している。メイドは本に視線を移し、悠里よりも早く読み進めていく。それに気がついたのか悠里も負けじと本に喰らいつく。
『この時(2050年現在)男女比は1:2となってしまった。だが、この時点でも少しおかしいのだ。男女比と言っておきながら子供ができる者同士の比率が出ていない。それが、この原因となる。
子供を作ることができる年代(中2〜40歳とする)この年代で考えるのなら、1:3だろう』
「子供が作る?ってなにするの?」
「もう少し大人になればわかるかな?」
そうはぐらかされた。性教育が始まるのは小学6年だ。まだ3年である悠里は知らない。
『美しい女が美しい男を取る。見た目主義で恋愛は行われる。いわゆる一夫一妻だ。それがまだ続いていた。そして、イケメンでない男は結婚せずに取り残されてしまったのだ。数を補っていた老人の男性は死に、出産数は減少し男女比は1:4まで落ちてしまう(2070年)。ここで男性の少なさの問題が露見した。
それに危惧した政府は精子を寄付してもらう政策を始めたのだ。生まれてくる子供はランダムになる。そして始まるのは、子供ガチャだ。イケメンでないなら殺し次の子を身籠る。それが
これで男女比は1:5になってしまった(2075年)。この文章を書いている途中に重婚化の政策が始まるらしい。どうせ失敗するのが見えているのだから……』
この文章を書いていたのは、2110年ごろらしい。今は2150年だ。
次の章は『現れるであろう政策とその問題』だった。興味がわかず、難しそうだったためその本を閉じた。
「んー。難しいね」
「これは……人間の業を煮詰めて固めたものですね…」
メイドは言葉を濁す。本音を言うのであれば、失策に失策を重ねたゴミどもの結果と言いたいところだろう。だが、目の前にいるのは子供だ。そう言葉にすることもできない。
「……40年ってことは新しい政策てでたの?」
「子供を殺させない法律や男性を保護する法律、などです」
「へー。それでも、失敗して1:10になったんだね」
大きな原因は結婚しても子供を産まない人が出たことだろう。結婚の義務化はすぐに出た。だが、効果はあまりなかった。白い結婚が
ダンジョンを第一に考え子供を産まない人、子供を産む法律を作ったところで1人くらいしか産まずに意味がなくなることもある。
男が人口を補うには子供の数がその対比側の数字以上になる必要がある。だが、それができないため減少していったのだ。
___
後書き
この話をまとめると、魔王の呪いで男の人口が減りましたよ!ってだけです。
魔王がいたと言う情報と呪いがあるってことだけを知ってもらえると十分ですね
残りは趣味とテンションで書いています
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