第4話
1日空けて、学校に移動する。男子が学校に行くのは、週に多くて3回までだ。その日付も決められている。別に一週間学校に来なくてもいいとまで言われている。男子が自由な時代だ。
といっても月に一回は学校に来ることにはなっている。そのクラスメイトの男子2人は、もう学校には月に1回しか来ていないのだ。
なんといってもその楽しさの違いだ。娯楽に溢れているため、学校に来るよりも家にいる方が楽しいと感じてしまう。友達がいないのに学校に行かなければならない。強制なら仕方ないが、自由となればどうなる?行かないだろう。
大学で出席日数ギリギリで単位を獲得するようなものだ。嫌ならギリギリにすればいい。それが許されるのが男たちだ。
閑話休題
そのマジックキャットが来た日の晩のことだ。
「友達ができたよー!」
「右隣の太郎くん?それとも左の健太くんかな?」
どちらも男の名前しか出てこない。仕方ないことだろう。
「ううん。前の席の子!名前は……覚えてないから今度聞いておくね!」
そう答えたところ、母の顔はしかめ面に変わる。男と女が会話をすることなんてまず起こり得ない。それよりも、話しかける時点で少しおかしい。
「その子と話してね〜。ペットを飼いたいってことになって、お母さんに頼んでみればってなったんだ〜」
思い出すように悠里は話し、にこやかに笑う。そこには邪念の一つもない笑顔だった。母の心の中ではいつから私の心は黒くなったのかしらと考えていた。
「だから、今日来た猫ちゃんの写真あげてもいい?」
「んー。……別にいいけど、来週でもいい?」
少し考えたのちに母は返事をした。これは嘘である。本気でやれば、数時間で終わってしまう。金を使えば数分だ。だが、それは行わない。
母はクラス名簿は住所の書かれた紙を持っている。何かあった際にO・HA・NA・SHIに行くためだ。この時間稼ぎは、親がどんな人なのかを探るための時間だ。
親がいい人であれば、このまま関係は続行し、あまり良くないのであれば遠くに行ってもらおうと考えていたのだ。その探偵を雇って探るなんて造作もない。ダンジョンやスキルがあることにより、スニーキング《ストーカー行為》なんて余裕だ。情報なんて一瞬で集まるだろう。
「その前の席の子は何か買っていたの?」
そんな思案のことは放棄し、ポーカーフェースで悠里に話しかける。これも情報を抜き出すためだ。
「うん!犬を飼ってるんだって!」
何も疑うことのなく悠里は返事をする。
「代わりに犬の写真と交換するのはどう?」
「……聞いてみる!」
悠里はその場面を想像し、満面の笑みで了承する。ここも母の考えがある。人間が良さそうに見えて、体罰をしているケースなんかもある。動物がガリガリに痩せているケースなんかもある。
それを判断しようとしているのだ。
「あと、読書が好きで、今日は推理小説なんかも読んでいたよ!」
悠里はポロポロとその子に関する情報を大量に落としていく。
「うん。うん」
母はにこやかに微笑みながら
「椅子ってあんなに重たかったんだねー」
「ん?」
母はついそう返事を返してしまった。
椅子の重たさははっきり言って異常だ。女の子であれば頑張れば1人で持つことができる。だが、安全性を考慮して2人で持つようにしているのだ。
「一人で持ったの?」
「うん、けど持ち上がらなかったんだ……」
そう、持ち上げることができずに引きずったことがおかしいのだ。女子であれば椅子を引きずることができるのも納得できる。だが、男子がそれを行ったことがおかしいのだ。
男子と女子のステータス差は激しい。そのため、女子に合わせるようにして作られた椅子を引き摺ることはまず不可能だ。
「……あの仮説が正しかったのかしら」
ぶつぶつと母はつぶやいている。
「冷えないうちにさっさと食べましょう!」
そう言いながらさっきのぶつぶつとしたつぶやきを誤魔化すようにして、家族の団欒の食事は再開された。
ぶつぶつとつぶやいていたのは、男性と女性の
女子の方が強く生まれやすいものだ。だが、弱い女子もいるため疑問視されていた。
そして、弱い意見として出ているのは遺伝説だ。親からステータスの1部を才能としてもらうことで、初期ステータスが高いのでは?というものだ。
母が推測したのは後者の方だった。
女子であれば、母の75%の才能を引き継ぎ、父の25%の才能を引き継ぐ。その反対になるのは男子だ。母の25%を引き継ぎ、父の75%を引き継ぐ。
このことから捉えられるのは、一生男子は弱いままという問題だ。弱い女子がいることや、男子がずっと弱い理由もこれで解決することができるのだ。
ダンジョンに潜らない男子のステータスは今後どんどん話されていくだろうとされている。
母が妊娠した遺伝子の情報は国により隠匿されているため、情報が出ていない。その情報がわかれば、証明できるのに……と少し悔しがっていたのだ。
そのことはまだデータが足りないので証明することはできない。実際に行うのなら下手すれば100年単位の研究になるため、人生を使った研究になるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます