第三十三話 二度目の選択
夜。
自室の灯りの中、俺はスマホを握っていた。
コメント欄は“次の予知”を求める声で埋まっていた。
拒否しても、逃げても、騒ぎは止まらない。
ならば――コントロールするしかない。
(……やるしかない)
再び、仮面を手に取る。
この仮面が、たった一度の出来心で買ったものだなんて、
今では自分でも信じられない。
■二回目の配信スタート
配信用アプリを起動し、録画ボタンの赤い丸が点灯する。
仮面越しに、世界とつながった。
「……こんばんは。
一度だけと言ったが、どうやらそれでは終われないらしい」
コメントが一気に流れた。
「来た!」
「待ってた!!」
「本物だ!!」
「今日の未来は?」
「スパチャ投げたいんだけど?」
視聴者数は初回の三倍を越えていた。
「今日も“近い未来”をいくつか話す。
信じるかどうかは、きみたち次第だ」
俺は覚悟を決め、淡々と予知を語り始めた。
・コンビニで起こる小さな火災
・明日の強風で倒れる看板の場所
・深夜に起こる交通の乱れ
どれも人命に関わらない範囲で、
予知して問題のないものだけ。
それでも、コメント欄は歓喜で爆発していた。
「全部的中したらガチでヤバい」
「記者呼んできた」
「もっと言って!」
「あなたは何者なんですか!?」
配信の最後に、短く告げた。
「必要な時だけ話す。
それ以上は答えない。
……じゃあ、また」
配信を切った瞬間、
俺は深く息を吐いた。
(これで……少しは静まってくれれば)
だが、それは甘い期待だった。
■翌日
大学の正門前。
カメラを構えた記者が六人。
スマホで撮りながら歩く学生たち。
まとめ動画を撮るYouTuberまでいる。
「“仮面の予知者”はこの大学の学生らしいです!」
「内部情報、募集中!」
世界が加速しすぎていた。
俺の足は止まり、心臓が重く沈む。
(……どうすればいいんだ)
助けたい人がいて、
守りたい人がいて、
でも世界は――それを許さず広がっていく。
次の予知が、また俺を動かす前に。
雨宮には……どう伝えるべきか。
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