第六話 予知されるのは“選択”だけ
『前に進めば、衝突に巻き込まれる。
だが、右に五歩避ければ……助かる。
ただし――』
映像が途切れる。
「ただし“何”なんだよ……!」
足がすくむ。
だが、未来ははっきり示された。
右に五歩。
それが生還ルートらしい。
ただし、その先には“何か”がある。
未来は未来を教えるが、結末までは教えない。
それがこの能力の、ずる賢くて、意地悪なところだ。
「……進むか、戻るか」
つぶやきは、自分の心の震えを確かめるためだけの独り言だ。
他人は要らない。
アドバイスも仲間も、ヒロインすら必要ない。
俺は、自分の未来を自分で選ぶ。
「右に五歩だな」
一歩、二歩。
足元の地面が、不気味なほど硬く、冷たい。
三歩、四歩。
心臓がうるさくて、周囲の音が消える。
最後の五歩目を踏み込んだ瞬間――
轟音。
背後で、何かが破裂したような音がした。
振り返ることなく、俺はその場にしゃがみ込んだ。
(……避けた。避けられた)
震える息が漏れた。
命を拾った実感が、遅れて襲ってくる。
だが――同時に、考えてしまう。
(“ただし”の部分は……これから来るのか?)
予知はまだ終わっていない。
それを示すように、ポケットの中の百円がひとつ、転がり落ちた。
まるで、次のステージに進めと言うように。
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