第二話 雑魚能力か万能能力かの境界線
次の日。大学の空きコマ。
俺は構内のベンチに座り、手のひらの百円玉をじっと見つめていた。
「未来が見える……でも、どれくらい先が見えるんだ?」
昨日の予知は全部“数秒先”だった。
せっかくの超能力なのに、その程度なら、正直ショボい。
しかし――使い方次第では、とんでもなく強い可能性もある。
ためしに、振り込み期限ギリギリで焦っている課題提出システムを開きながら百円を投げる。
カチリ。
『このあとシステムが重くなり、提出画面が落ちる』
「ちょっ、マジか!」
すぐに提出。
数十秒後、本当にシステムが落ち、友人たちが騒ぎ出す。
その瞬間、背筋が震えた。
これ、割とヤバい能力なんじゃないか?
時間予知の範囲が分からない以上、実験するしかない。
研究棟裏の人気のない場所。
俺は百円玉を十枚机に並べ、深呼吸した。
「行くぞ……まずは一枚」
カチリ。
『五秒後、金木犀の花が風で落ちる』
まあ、どうでもいい未来だ。
「次。二枚目」
カチリ。
『十分後、空が曇り始める』
ちょっと遠くなった。
やはり“ランダム”なのか?
「三枚目!」
カチリ。
『一時間後、自販機に入れた百円玉が詰まる』
「なんだよそれ!」
どうでもいい未来でも、割と起きる。
というか俺、未来でトラブルが多すぎじゃないか?
試しに十回使ってみたところ――分かった。
・見える未来はランダム
・時間幅は数秒~数時間
・精度は高いが、内容は選べない
つまり、狙った未来は見えない。
だが、逆に言えば、どんな危険も金で回避できる可能性がある。
……ただし百円ずつ。
「いや、コスパ悪っ!」
学生の百円は重い。
牛丼の大盛りに手が届く値段だぞ。
悩みながら財布を見ると、小銭が思った以上に減っている。
「……ダメだ。破産能力だ、これ」
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