100円払うごとに一回未来予知できるようになった話

@kouki1026

第一話 未来予知は自販機より軽い音で鳴る

  財布の小銭がやけに重たい日だった。

 大学帰り、駅前の古びた神社にふらりと寄ったのは、本当にただの気まぐれだ。

 朱塗りの鳥居の下で、いつも通り「今日も金欠だな」なんてぼやきながら賽銭箱に百円玉を一枚投げ入れた瞬間――


 カチリ。


 妙な音がした。

 金属がはまるような、鍵が回るような、そんな確かな“手応え”のある音。


「……ん?」


 次の瞬間、俺の視界が一瞬だけ白く弾け――


『二歩先で段差に躓き、派手にこける』


 そんな映像が脳裏に走った。


「はあっ!?」


 慌てて足を止めると、本当に二歩先に段差。

 未来の俺は、そこで派手にすっ転ぶ予定だったらしい。


 そして気づく。


 百円払ったら、未来が見えた。


 ……いやいやいや、そんなのあるか?

 俺はこめかみを押さえながら周囲を見回したが、誰も気にしていない。神社は夕暮れで静まり返り、鈴の音だけが風に揺れた。


「ちょっと待てよ……」


 恐る恐る、もう百円を投入してみる。


 カチリ。


『社務所の角からボールが飛んできて頭に当たる』


「ぐわっ!」


 慌ててしゃがむと、次の瞬間、子どもが転がしたサッカーボールが俺の頭上をかすめていった。


 本物だ。

 百円払うごとに、一回だけ未来予知が出る。


 それは、まるでゲームのガチャのように、確率でもなく、曖昧でもなく――

 機械のように確実に発動した。

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