第6話:優しい嘘は凶器にもなりえる
祭りの後は異様に静かだと、誰かが言っていた。それは、戦いのあとも変わらないのかもしれない。
拠点へと向かうローザとルト。その道には足音だけが残されていく。
「ヤケド、は大丈夫みたいだな」
「ええ、問題ないわ。既に回復魔法をかけておいたから」
「流石、闘将とか聖女とか武神とかの称号を総なめにしてるだけはあるな」
「やめて頂戴、闘将は好きだけど、聖女って柄じゃないのは私が1番知ってるわ」
「そうか?魔族に命乞いされて踵を返したら後ろから刺されたなんて、甘っちょろい話も聞いたけど」
「……なんで知ってんのよ」
「情報屋だからな」
凍てついた時間が溶けだし、言葉は流れ出す。
「私より、あなたの強さが恐ろしいわよ」
「俺はローザより弱いだろ?」
「普通なら、私に敵うはずない。魔法や武術の初歩を全て覚えるなんて、完全に器用貧乏で終わるじゃない」
ルトは虚空を見つめる。ローザはその姿を見つめて、肩を落とす。
「失言、だったわね……」
・・・・・・・
・・・・
ルトは拠点に入ると、ローザを招き入れ、客席に座らせた。客人にはコーヒーを出すのがこの場でのルーティンとなっているが、ローザには決まってレモンティーを淹れる。
「この部屋に広がるこの香りが、最高なのよね」
「それはどうも」
ローザと対面に座ったルトは、レモンティーを一飲みしたのを見計らい、本題に入った。
「それで、あの部屋は何だったんだ?」
「国家指定の犯罪シンジケート”夜鴉”」
その言葉に、ルトは眉をひそめた。ステイル王国どころか近隣諸国までその名を轟かせる集団。噂では、人身売買や違法な薬物の密売を行っている完全悪な組織だ。
「奴らはこの場所で男の命を糧として、とある召喚魔法を行った......名前は”黒のベリアル”」
「悪魔召喚か......」
「えぇ、それも最強の原色種、なぜか失敗したようで、召喚者のみが死亡。遺体は回収されずに終わったわ。目的は呼び出す悪魔からして恐らく、国家の転覆か滅亡ね」
ルトは腕を組んで項垂れる。依頼された少女の父親は、夜鴉に深く関わっている人物の可能性がある。大きい魔力が発生した跡地では、ルトの魔法が使えない。その場の記憶が、魔力によって拡散するからだ。
「ルトはなぜあの場に?」
「俺は、少女から父親の捜索依頼を出されたんだ。お宅のところの憲兵が、門前払いしたんだと」
「悪かったわね、後できちんと指導しておくわ」
「それで、国はこの件をどう片付けるつもりだ?」
「私の見立てでは、大事になると考えていたのだけど、どうやら国も一枚岩じゃないのかしらね、早々に捜査の引き上げ命令が出たわ」
「内通者、もしくは夜鴉に汚名を擦り付ける首謀者がいる......ってとこか」
「あら、鋭いわね。まず間違いなく、そうでしょうね。でも、私は国王様の剣として、この身を振るうわ」
レモンティーを一気に飲み干し部屋を後にした。
・・・・・・・
・・・・
—―三日後、王都市街地噴水前――
ユノは下を向いて待っていた。約束の日、どれだけでも待とう。そう心に誓ったが、底知れぬ不安が押し寄せていた。
「ユノ!」
遠くから聞こえる声に、ユノは目を輝かせて前を向いた。
「お父さん!」
そこには、まぎれもなく父の姿があった。
「遅くなってすまない。母さんの治療費を稼ぐために働いていたんだ」
そう言って大きな袋を見せびらかす父親に、ユノは無言を返した。
「ど、どうした?母さんが治るんだぞ?嬉しくないのか」
「ううん、嬉しいよ」
しかし、下を向くユノ。
「よかった、あとな、父さんまた仕事で帰れなくなりそうなんだ。お金は定期的に持ってくるから、その間母さんを守ってくれるか?」
なおも下を振り向いたまま涙を流すユノ。しかし、涙をふき取り、父親に笑顔を向けた。
「うん!いってらっしゃい!お父さん!」
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