生き返ったジョン
化野生姜
(現在、書き手の特定には至っていない)
七月二十五日
夏休みの自由研究。
穴の観察をすることにした。
庭の
ボクの両手を広げたくらいの大きさだ。
四角くて、真っ暗。
…それに
本当はジョンの日記をつけたかったけれど。
悲しくなるのでやめてしまった。
ジョンが、よくなりますように。
*
七月二十八日
穴は
よく見ると。
中心に何かが浮いている。
四角い箱のように見える。
奥にも、まだまだたくさんあるみたい。
ジョンの顔がマトモに見れない。
お医者さんは
切ないから、穴ばかり見てる。
*
八月一日
朝、ジョンが冷たくなっていた。
父さんと母さんが。
午後にペット
朝から、ずっと、ずっと泣いて。
穴のことを忘れていた。
でも、昼前にふと思い出して茂みを見た。
穴もあるし。
箱もたくさんある。
何となく。
ジョンを
両手で持って。
ジョンを穴に
箱はジョンに
ススッとよけるように動いた。
頭まで
お花の入った箱にジョンを戻した。
…なんで、あんなことをしたのか?
でも、どうしても
ボクはしょうがなかった。
*
八月三日
骨になったはずのジョンが戻ってきた。
夕方、
でも、目だけが真っ暗だ。
あの穴みたい。
家に帰ると茂みに。
穴の中へと
心配したら首を出して。
こっちに向かって、一回
どうも、これからは。
穴がジョンの家のようだ。
*
八月七日
…ジョンが。
ボクの知ってるジョンじゃない。
最近、穴に首まで浸かって。
ずっと口を開けている。
開けた口の中で。
何かが、うごめいている。
よく見ると。
小さな箱が動いていた。
真っ黒な箱が。
ジョンの口の中を作っていた。
目の中も同じ。
小さな黒い箱が動いてる。
外側がジョンなだけ。
…すごく、怖くなってきた。
*
八月八日
雨の中、ジョンを川に
自転車のカゴに乗るように言って。
そのまま橋の真ん中で落としてきた。
夜だったし。
…
あれは、ジョンじゃ無い。
橋の上で。
ボクは、ちょっとだけ泣いた。
*
八月九日
海で船が
三人の
…でも、気になったのは海の映像。
波の一部が切れて。
キレイな四角い穴が見えた。
茂みの下を思い出す。
庭の穴はもう見ないことにした。
でも、庭に近づくと。
ボクの腕がピリピリする。
*
八月十日
どうしよう、どうしよう。
窓から人が見える。
ボロボロの服の三人のおじさんが。
ボクの部屋を見ている。
真夜中なのに。
おじさんたちの目が見える。
真っ暗な目が見える。
目の奥に小さな箱が動いている。
ジョンと同じように。
どうしよう。
ボクの手も真っ黒だ。
あの時、ジョンを穴に
ボクも
…父さんも母さんも。
気にしていなかったから。
ボクも気にしないフリをしていたのに。
おじさんたちは分かっている。
だから、ボクを見ている。
ボクの腕は。
四角い箱で、できている。
平たい穴がいくつも重なって。
箱になって。
今は、ボクの腕になっている。
どうしよう。
もう、ボクは…ボクじゃない。
*
(補足1:日記は転載されたもの、ひらがなの一部は漢字に変換されている)
(補足2:サイトの管理者によれば。日記は小学校のサーバーに宿題として提出されたもので、一般でも
(補足3:現在、データは削除され。書き手の特定には至っていない)
生き返ったジョン 化野生姜 @kano-syouga
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