とても温かく、切なく、心地よい短編でした。

幼い日の記憶と母親との和やかな時間が、ペンネーム「時雨ノ色」に込められているという構成が見事です。「時雨」が「過ぐる」からきた言葉だと知り、時の流れを感じさせられ、読後にはじんわりと心がやわらぎました。母の愛情と、それを受け継いで物語を書く主人公の姿が胸を打ちます。

「秘密は秘密、ってね!」というラストのひと言が、物語全体を優しく包み込んでいて、とても素敵でした。