第2話

(もしかしたら、レナたちが、その辺に隠れているのかもしれない)

 有羽は自分を励まして、思い切って取っ手に手をかける。

重厚な木の扉だ。

古いお屋敷にあるような、そんな立派なドアだ。

取っ手も、黒ずんだ金属でできている。

(本体は、どこ?)

木の茂みに隠されて、その姿は見えない。

(でも、これはどう見ても…ドアよね?)

黒ずんだ金属の取っ手の側には、洋画とかで見たことがある、

ノッカーらしきものが目に入る。

(よし、ためしに…)

ためらいつつも、その金属に手を触れる。

ホコリやクモの巣が張って、汚れているのかと思いきや、

今しがた人が触りました…と言わんばかりに、テラテラと黒光りしている。

軽く触れると、有羽の手にしっくりとなじむ。


 コンコン…

重々しい音が、周囲に響く。

(まさか…本当に、誰かがいたりして?)

そう考えて、しばらく耳をすますけれども、静まり返った森の中なので、

鳥のさえずりや、木々のざわめきしか、聞こえてはこない。

(なぁ~んだ。やっぱり誰もいないんだ)

ガッカリすると同時に、有羽はホッと胸をなでおろす。

「開けますよぉ~」

わざと、相手に聞こえるように、大きな声を出すと、思い切って取っ手に

手を触れた。

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