第10話-目的??

「続きまして……私が伝えたかったのはこのことです……ブラッドフォード様がこの村に来た理由と繋がっています」

「……ん?」

「ブラッドフォード様が考えておられたように、騎士たちは今回の魔物の襲撃に何らかの形で関わっているのだと思います」


 俺が……何を思ったって?


「私はもう年をとってしまったかもしれませんが、長年冒険者として働いてきたんです……勘で分かります。ブラッドフォード様のお考えは間違ってはいないと思います」

「お、おっ……」

「おかしいと思ったんです……突然の魔物の四方八方への出現と、騎士たちの素早い登場」

「……おかしい?」


「突然のように見えるかもしれませんが、微妙に計画されていた形跡があります」

「……何を言ってるんだ?」

「アハハ、またまた。ブラッドフォード様とぼけなくていいんですよ。こういう時のエチケットは心得ていますので……しかし、不肖私ですけど、どうか最後まで聞いてください」


 いや、お前が俺が何を思っていたことがどう思っているかは本当に知らない。もうぼけているかもしれないから、お前の勘とやらを捨ててこい。


「魔物の犠牲者が増えていることも、騎士たちがそれに対処していることも……村長として、村に関連する、あるいは関連しそうな情報を把握しています。最初はこの村には関係ない……ただ運が悪かっただけだと思った。しかし、私が観察した結果……そしてブラッドフォード様がここに来られたことで、私の疑問は確信に変わりました」


 方程式に俺を巻き込むのはやめてくれない!? どんだけ俺を信用としてるんだ! 俺のことは知っているかもしれないが、初めて会ったんだろう!?


「この件……ロバートと、彼の家族に関わることですね?」


(俺が知らないことを確認を求めるな――)


「……え?」

「うむ、まだまだぼけいないようですね……ブラッドフォード様の反応から察するに、間違いなさそうですね? やはり、突然の来訪には理由がありましたか」

「……」


 このじじはさっきから一体何を言っているんだ? 何を言っているのか理解できないから、こんな顔をしているんだ。そんな裏の理由みたいなのはないから。


 いきなり何を言っているのか理解できない俺を無視して、村長はさらに状況を話し始めた。


 まず村長は、俺が村に関わることをどのように扱っていたかを説明した。

 俺の存在は、騎士たちと村人のほとんどに隠していたようだった。俺がかかわっていることを知っている者はごく限られている。

 

 ほとんどの村人は俺の正体を知らなかった。これは、俺が救おうとした他の村にも当てはまった。

 中には……俺を人間として見ていない人もいたから……この件に関与していることを隠すのは比較的簡単だったらしい。


 村長は俺に、俺に対する隠蔽工作はすべてうまくいったと自慢げに語った。


(その隠蔽工作……俺を処分するための準備だったんだろう? さすがは元ベテラン冒険者……堂々とそれを俺に自慢してくるとは……本当に度胸があるな……)


 俺はもう村にいなかったようだ。今いる場所は、クロマー村の外、北の果てにいる。

 ここは村の避難場所の一つらしく、他の数人の協力だけで、俺をうまく隠れることができた。


「これくらいは必要だと判断しました。ローズちゃんの協力を引き受けたのも、このためです。彼女も一緒にここに隠したかった……騎士たちに行方不明者の一人として報告しました」

「じゃあ……かえさせて大丈夫なのか?」


「はい、もう戻ってきてもおかしくないですから。また、今はもう騎士たちは村にいないので……それに、彼女の母も帰ってきたから問題ないはずです」

「そう……で、彼らが狙いだと思った理由はなんだ??」


「村の位置から考えて、魔物の多くは村の南南西側から来たはずです……魔物があちこちから来たことを考慮したとしても、魔物の多くが来た側が最も被害が大きいはずです」

「まぁ、そうなるよな……」

「ええ。しかし……なぜか村の北北東部が一番被害が大きいのです」

「北北東部って……」

「はい……彼らの家、ロバートたちがあるところです。そこから疑問がわいたんです」

「……そう」


「もちろん、それだけではない。偶然の一致かもしれませんから。しかし……騎士たちの行動には引っかかったのです」

「行動……?」

「やってきた騎士たちは、妙に……徹底していたのです。普通の人にはそう見えないかもしれないですが、私は経験上……人が何かを追い求めるときに、どれだけ【徹底】するのかを知っています。また、調査をしているというのに、自分たちの行動を平然と説明するのも不思議で、疑心暗鬼になってしまったのです」

「……そう」


 ……うん。なるほど。これで全体のことがわかった。 

 

 今、確信を持って言えるのは……

 俺は再び――

 何が起こっているのか全く分からないということ!!


(何なんだこれは……)


 何の前触れもなく放り込まれた今の現実を整理したとたん……またすぐに、何が何だかわからない状況に直面している?


 本当になんなのこれ? クソゲーのチュートリアルをやっているような気分だ。

 全体の説明がなく……ただただ設定が出てくるだけで、ゲームが進行していくって……


 だめだ。

 すぐにセーブポイントが欲しい。コントローラーから手を離したい。

 セーブさせてくれ!


「…………村長」

「はい、何でしょうかブラッドフォード様?」

「お前はどうするつもり?」

「……ブラッドフォード様の邪魔をするつもりはないんです。しかし、せめて……ロバートたちには知っておいてもらいたい。だから、この件に関しては、ブラッドフォード様がどうするつもりなのか、聞こうと思っています」


(俺に聞くなよ……)


「……わかった。1時間ほど休んだら、出かける準備をする。その間に、俺がお願いすることをやっておいてくれるかな?」

「そんな……しかし、起きたばかりで――いいぇ、わかりました。何をすればいいので?」


 村長には、基本的に俺が整理するための準備をするように言った。

 それがどう役に立つのか見当もつかないが、現時点では、もう悩む必要がない形で決着をつけたかっただけだ。


「……わかりました。一時間でちゃんと整理しておきます……では――」

「……村長」


 行く前の村長に声をかけた。自分の意思を明確にするために、できるだけ厳粛な表情で彼を見つめた。


「はい……何でしょうか?」

「俺はここにいなかった……君は何も知らない……」


 俺はもうこの件には関わりたくない。

 だから、最初から私がここにいなかったかのように振る舞ってほしい……

 という、わかりやすく彼に伝えた。


「……はい。失礼します」


 村長が去り、ようやく安らぎの時間が訪れた。


「はあ……しょうがない。どうするかは……未来の俺に任せる。うん」


 がんばれ俺。まかせた。

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