第5話 常勝軍団への道

観客の歓声が体育館に響き渡る。

千葉オーシャンアローズのリーグ戦第1節、ホームゲームでの対戦相手は、

昨年度リーグ上位の強豪チームだった。会場には地元ファンが詰めかけ、

実況席のマイクを通して熱気が伝わる。


「さあ、千葉オーシャンアローズの新星、高田美波選手に注目だ!」

実況の声が響く。観客席からは歓声と拍手が入り混じり、

選手たちの緊張感を一層高めていた。


試合開始の笛が鳴る。美波は深呼吸してボールを握り、

チーム全員の動きを確認する。

スカーレットはリング下で準備を整え、松井梨花、上野彩佳、大澤紗英もコートに散る。


「美波、ボール!」

松井が声を出す。

美波は瞬時に判断し、スカーレットにパス。

スカーレットはスクリーンを利用し、相手ディフェンスを引きつけながら

豪快にシュートをねじ込む。リングが揺れ、観客席から歓声が上がる。


「ナイスシュート!オーシャンアローズ、先制だ!」

実況も興奮気味だ。


その後、試合は一進一退の攻防が続く。

相手チームも強力で、リバウンド、ブロック、速攻で何度も得点を返す。

しかし、千葉オーシャンアローズは以前とは違った。

チーム全員が互いの動きを読み、スクリーンとパス回しで連携を重ねる。


「美波、左にパス!」

「スクリーン!松井!」

声が飛び交うコートの中で、チームは一つになっていた。


前半終了間際、

美波がドリブルで駆け上がると、スカーレットがインサイドでブロック。

その間に松井が3ポイントラインに飛び込み、美波がパス。

シュートは完璧に決まり、観客席は歓声の渦となった。


「素晴らしい連携プレイだ!チームとしての成長が見える!」

実況席の声も興奮気味だ。


後半に入ると、相手チームも一層激しく攻めてくる。

速攻で得点を奪われ、リードを許す場面もあった。

しかし、千葉オーシャンアローズは焦らない。

スカーレットがインサイドで体を張り、大澤紗英がリバウンドを確保。

美波は冷静にパスを回し、前田美里が先頭で速攻を仕掛ける。


「美波、パス!スカーレット!」

松井の声がコートに響く。

スカーレットがリング下でターンし、ボールをリングに押し込む。

相手ディフェンスも必死だが、チーム全員がサポートしシュート成功。


残り1分、オーシャンアローズは1点差で追い上げていた。

会場の歓声が最高潮に達する。実況も息を弾ませる。

「さあ、このまま逆転なるか!高田美波、どこにパスを出すか!」


美波は相手の守備の動きを読み、スクリーンを使って味方をフリーにする。

松井梨花がリングから外れ、3ポイントシュートの姿勢に入る。

観客は息を呑む。


「シュート……決まった!」

歓声が体育館中に響き渡る。逆転成功。

残り数秒、相手は最後の攻撃を試みるが、

上野彩佳とスカーレットがディフェンスで完璧に止める。


笛が鳴り、試合終了。スコアは千葉オーシャンアローズの勝利。

観客席からは拍手と歓声が絶えず、

チームメンバーは汗と涙を混ぜた笑顔で抱き合う。


「やった……勝った!」

美波もスカーレットも、互いを見つめて微笑む。

長い努力と練習の成果が、この一瞬に結実した。


実況も熱を帯びた声で締めくくる。

「千葉オーシャンアローズ、

 見事な逆転勝利!チームとしての成長と連携力が光った試合でした!」


その後のインタビューでも、美波は静かに話す。

「一人ではここまで来られなかった。チーム全員が一つになったから勝てた」

スカーレットも笑みを浮かべ、「このチームでプレイできてよかった」と短く答える。


千葉オーシャンアローズは、ついにチームとしての形を完成させつつあった。

まだ道は長い。


しかし

この日見せた連携と信頼があれば、常勝軍団への道も夢ではない。


体育館の照明の下、

選手たちの影は誇らしげに長く伸びる。

歓声に包まれた中、チームの未来は確かに光を帯びていた。


――こうして、高田美波とスカーレット・マリア・クリステンセンを軸に、

  千葉オーシャンアローズは弱小から常勝軍団へと歩み始めたのだった。

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