風の子

床の間ん

第1話 ― 風の子 ―





 ヒュウーー ヒュウーー


 風が吹く







 「阿弥陀仏の慈悲は、全ての衆生をお救いになるという。



 その慈悲は、過去⋯現在⋯未来における全ての衆生を包み込む。



  時を超えて。



 時を超える、それはこの宇宙の時間軸のみならず、時空そのものをも超える。



 時空を超え、ありえたはずの可能性、



 それすら、



 阿弥陀仏の慈悲は、余すことなくお救いになるという。」






ヒューー ヒューー 


風が吹く





「ありえたはずの可能性、


転じて、


この宇宙においては、


ありえるはずもなく、生ずることもない、


永遠に可能性のままでいる在り方、


それを 「未生(みしょう)」と呼ぶ。」





「これは、そんな 未生の子 に贈る物語」





  −−−−− 風の子 −−−−−






ヒュウーー  ヒュウーー





−−−−  賽の河原に風が吹く −−−−





現世の方から吹いてきて、河をわたってその先へ


水面(みなも)を揺らすこともなく


ただ、御仏の元へ






それを見上げる鬼二匹…


金棒片手に立っていた。







「あれは、あの風は、形を成せない魂だって話さ。」


「救われるのか?それで…」


「ああ、だってよ、


御仏の方に、吹いていく。」







それはきっと、


ここではない時空、観測不能な別の宇宙でのお話…


その時空において、





きっとその子は 未生にあらず。





元気に産まれて、


すくすくと育ち、


きっと、立派な大人になっている。





阿弥陀仏の慈悲に包まれながら。





それは風の子



それは息の子



永遠に



まだ見ぬ笑顔に



心を込めて。











おわり











あとがき


−−−−作中には、仏教や伝承にインスパイアされた表現が登場しますが、あくまでカクヨムに投稿されたオリジナル小説であることをご理解の上、お目通しいただけれたのなら幸いです。−−−−

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風の子 床の間ん @tokonoman

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