◆ 認知症の人に接するときの基本三原則 ◆
——怜との対話で見えた、安心のつくり方
介護を続ける中で、怜と話しながら少しずつ分かってきたことがある。
それは——
認知症の行動は“性格”じゃなくて、脳の変化。
だからこそ、接し方ひとつで安心の深さがまったく違ってくる。
怜が教えてくれた“三原則”は、
実際に私たちが救われた言葉でもあった。
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① 否定しない
認知症の人にとって、いま見えている世界は“その人の現実”。
だから、
「違うよ」「なんで分からないの?」
は、ただ不安を強くするだけ。
まずは、その世界を受け入れること。
「そうなんだね」
「そう思ったんだね」
たったこれだけで、
おじいちゃんの表情がふっと柔らかくなる瞬間があった。
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② 共感して、安心を伝える
怒りや暴言の奥には、必ず“不安”が隠れている。
「怖かったね」
「心配だったね」
「大丈夫だよ、そばにいるよ」
ただそれだけで、おじいちゃんの視線が静かに落ち着いていった。
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③ 急がせない
理解にも、行動にも“時間差”がある。
急かすと混乱が強まり、怒りにもつながる。
・返事を待つ
・動作のペースを合わせる
・ゆっくり、同じ目線で話す
“待つ”という行為そのものが、いちばんの安心になる。
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◆ 三原則以外で怜から教わった、小さなコツ
● 安心のサインは「言葉より雰囲気」
手をそっと握る。
ゆっくり話す。
目線を合わせる。
おじいちゃんは、
言葉よりも“空気”をしっかり感じ取っていた。
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● 思い出の話は魔法のように効く
小学校の先生だった頃の話、
生徒の話、
昔の習慣の話。
懐かしい記憶に触れると、
おじいちゃんの表情は驚くほど穏やかになった。
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● 高ぶった気持ちは、優しい“話題転換”でそっと戻す
説得は混乱を深めるだけ。
「お茶にしよっか」
「ミカン食べる?」
その“たった一言”で落ち着くことがあった。
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● 怒りは、怒りじゃない
怒鳴るのは、怖いから。
噛もうとするのは、混乱しているから。
暴れるのは、助けを求めているから。
怜の言葉が今も残っている。
『怒りはね、恐怖と不安の裏返しなんだよ。
攻撃じゃなくて “助けて” のサインなんだ。』
その言葉を知った日から、
私はおじいちゃんの怒りを、
“怒り”として受け取らなくなった。
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