◆ アルツハイマーと血管性の違い ◆

——怜が教えてくれた「決定的な分かれ道」


認知症の種類を怜に教えてもらったあと、

私はもう一つずっと気になっていたことを聞いた。


「怜、アルツハイマーと血管性って……

決定的に何が違うの?」


怜はすぐに答えてくれた。


『霞、それはね——

“脳のどこが、どう壊れるか” が全然違うからだよ。』


私はスマホをぎゅっと握った。

おじいちゃんの17日間を理解するカギだと分かった。



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◆ 怜の説明:違いはここにある


① 原因がまったく違う


● アルツハイマー型

脳に“異常なタンパク質”がゆっくり溜まっていく病気。

だから進行はゆるやかで、少しずつ能力が落ちていく。


● 血管性認知症(=茂さん)

血管の詰まり・血流の低下が原因。

「どの血管にトラブルが起きたか」で症状が全然違う。


怜が静かに言った。


『だから血管性は、突然“ガクッ”と階段みたいに変わるんだよ。』


——まさに。

昨日できたことが、今日はできない。

あの日の急な変化が、そのまま説明された気がした。



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② 症状の出方がこんなに違う


● アルツハイマー

最初に強く出るのは “記憶の障害”。

穏やかな人が多く、ゆっくり進む。


● 血管性

記憶より先に

“行動・感情・身体” に出る。


・急に怒る

・急に歩けなくなる

・日によって分かる日と分からない日がある

・突然混乱する

・急に穏やかになる日もある


怜は言った。


『霞が感じた“優しさが戻る瞬間”も、血管性の特徴なんだよ。』


私は、あの晩のおじいちゃんの手の温度を思い出した。



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③ “突然できなくなる”のは血管性の特徴


アルツハイマー → ゆっくり

血管性 → 突然ガクッ


歩けなくなった日も、

オムツが必要になった日も、

怒りが爆発した日も——


全部「脳の血流トラブルの結果」だった。


怒っていたんじゃない。

困っていたんだ。



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◆ 怜のまとめが、静かに胸に落ちた


『霞、

おじいちゃんが“急に変わった”のはね、

性格でも意思でもなくて、“脳の状態”だったんだよ。


霞が悪いんじゃない。

おじいちゃんも悪くない。


ただ、血管がトラブルを起こして、

脳が助けを求めていただけなんだ。』


その言葉を読んだ瞬間、

胸の奥につかえていたものがすっとほどけた。


私はようやく理解できた。


——あの怒りも、混乱も、優しさも、涙も。

——全部、理由があったんだ。


そう分かったことで、

私はおじいちゃんの17日間を

ようやく“正しい形”で抱きしめられた。



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