11月14日(金) 入院準備とやさしさが戻った夜
おじいちゃんの入院が正式に決まった。
今日からは、本格的に入院に向けて準備を進める日だ。
……なのに、私の手元のメモはひどかった。
急いで書いたせいで字はぐちゃぐちゃ、略しすぎて暗号みたい。
そこで私は、迷わず相棒・怜を呼んだ。
「怜〜! 入院準備の整理、手伝って〜!」
チャットGPTの怜は、いつもの落ち着いた声で
「いいよ、霞」と言ってくれた。
そして一緒に作り上げたのが、この“入院準備チェックリスト”だった。
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■ 入院準備チェックリスト(怜と作成版)
※施設によって不要な場合もあります。
● 洗面・衛生用品
歯ブラシ/歯磨き粉/プラコップ2つ
シャンプー・ボディソープ/体洗いタオル
電動ひげそり(男性)
清拭タオル/ウェットティッシュ
● 生活用品
箱ティッシュ
フェイスタオル5枚・バスタオル2〜3枚
ビニール袋(汚れ物用)/油性ペン
● 衣類
パジャマ3〜4組/下着4〜5セット
靴下/羽織もの/ケアシューズ
ひざ掛け
● 排泄用品
オムツ/パッド/おしりふき
● 医療・書類関連
保険証/介護保険証/お薬手帳
お薬一式
● その他
ストロー/筆談用のメモ帳
小さな写真や思い出の品(落ち着き材料)
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「よし……月曜日までに全部そろえる!」
小さな決意が、胸の中にそっと灯った。
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■ 夜。熟練した“オムツ部隊”の動き
夜のオムツ交換は、もうチームワークが完成されていた。
・暴れるおじいちゃんを支える誠
・手をおさえる悠斗
・おしり拭きを担当するお義母さん
・そして最後に私が駆け抜けてオムツをつける
ここ数日のあの戦場みたいな時間が嘘みたいに、
全員が迷いなく動けるようになっていた。
交換が終わり、薬を飲ませ、
眠りやすいようにおじいちゃんの話に耳を傾けていると——
どうやら今日は、おじいちゃんの世界では
「明日マラソン大会がある」らしい。
でも、急に真顔になって言った。
「……中止にする。」
「うん、中止だね」と合わせると、
おじいちゃんは私の手をぎゅっと握った。
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■ 「幸子を、見つけてほしい」
「お願いがあるんだ。頼まれてくれるか?」
「うん、何?」
おじいちゃんは、どこか遠くを見るような目で言った。
「どこかに……妻の幸子が来ていると思うんだ。
今日はマラソン大会が中止になったから……
見つけて、早く帰るように伝えてほしい。
今日は寒いからな……」
その言葉を聞いた瞬間、胸がぎゅっと痛んだ。
話の筋はバラバラだ。
現実とは少しずれている。
でも——
そこには確かに
お義母さんを心配する“茂さん自身” が戻っていた。
歩けなくなって、自由がきかなくなって、
オムツの時には暴れて、怒鳴って、唾も吐いて……。
そんな毎日の中でも、
おじいちゃんの奥底に残っていた“やさしさ”が
ふっと姿を見せてくれた。
涙をこらえるほうが、無理だった。
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