第2話 借金取り

「ボス、連れてきましたよ」


 とあるオフィス。

 一人の白髪の女性が二人のスーツ姿の男性に、両手を掴まれながら中に入ってきた。

 女性の目の前には一人の坊主でスーツ姿の男性が立っている。


「よお、久しぶりだなあ」


 坊主の男性が女性に言う。

 女性はすぐさま、坊主の男性から視線を逸らした。


「おいおい、目を逸らすなよ。お前の親父が残した借金……さあ、どうする? 風俗とかどうだ? その身体つきと顔なら稼げるだろうさなあ、そうだ、それがいい。早速、俺の相棒をしゃぶってみろ」


 と、その時だった。


 勢いよく、窓ガラスが割れ、原付に乗った二人の男性によって坊主の男性が原付の下敷きになるのであった。



「「ボ、ボスうううう!!」」


 男たちの声がオフィスに響き渡る。


「い、てて……」


 と、先ほど出会ったばかりの男──ダルエッタ=ウォークは言う。


「ダル、こいつらで会ってるよな?」


 お尻を触りながら立ち上がるダルエッタ。


「そ、そうです……て、言うか!! なんつー、登場してるんですか!!」

「うっせーな、わざわざ五階まで登るのだるいじゃねーかよ」

「そ、そうですけど……」


 はあ、原付がおしゃかになっちまったなあ。

 まあ、しゃーねえ。


 ガサガサ、と原付が揺れだし、下敷きになっていたハゲの男が顔を出した。

 二人の男がボスと言っていたし、こいつが親玉だろう。


「い、いてえーな!!」


 そのまま、ハゲの男は片手で原付を外に向かって放り投げた。


 原付を片手で……なかなかやる男だなこりゃー。

 

「おい、ダル。ねーちゃん連れてここから早く去れ」

「え」

「こいつ、普通の人間じゃねえぞ」


 なんだ、この違和感は。

 どこか懐かしさがあって、それでいて憎い……まさかこいつ!?


「おいおい、今から俺はこいつに相棒をしゃぶってもらう予定だったのによお、にいちゃんわかってるよな?」

「さあーね、おい、ダル。早く連れて行け」

「は、はい!!」


 俺はポケットを漁り、パチンコ玉を一球、女性の両腕を掴む男の片方に向かって指で弾いた。

 パチンコ玉は男性の股間に直撃し、その場で青白くなり、口から泡を吐きながら倒れ込んだ。


 すぐさま、もう片方の男は女性から手を離してこちらに向かってナイフを向けて走り出した。

 

 俺は突き立てるナイフに向かって右拳をぶつける。

 一瞬にしてナイフは粉々となり、そのままもう片方の拳を男の腹部にめり込ませて、壁に向かって吹き飛ばした。


「ふん、お前、何者だ?」


 ハゲの男が俺に問う。

 その間にダルエッタは姉を連れて、その場から去っていく。


「下で待ってます!!」

「おう、待ってろー。すぐ行くからな」

「すぐ行く? お前の墓場はここだぞ?」


 こいつ、明らかに魔力が上昇してやがる。

 やっぱり、この雰囲気……。


「なあ、お前、魔族か?」


 次の瞬間、ハゲの男の口角が上がるとともに頭から二本のツノが生える。


「ああ、そうだよ、俺は魔族だ」


 同時に、ハゲの男による魔力で窓ガラスがバリン!! 、と割れ出した。


 ああ、やっぱりそうだ。

 しかも、そこいらの魔族じゃねーぞこれ。

 おいおい、ダルのやろう変なことに巻き込みやがって!!


「なんで魔族が人間界にいる? 人魔条約はどこいった?」

「人間との干渉をやめる条約……ははは、さあなどこにいったんでしょーかなあ」

「まあいいや、テメーが魔族なら俺も手加減しねーぞ」


 まさか、こんな形でまた魔族と戦うことなるなんてなあ。

 変な縁だこと。


 俺はハゲの男を指差して言った。


「テメーが壊した原付代、しっかりと払ってもらうからな」


 と。

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元勇者ですが、街角で何でも屋はじめました。 さい @Sai31

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