第4話 合い言葉は”おはしもちたい”
見渡す限りガレキの山となった街を緑色の装甲でおおわれたバスが進んでいく。
装甲の側面には「
バスの中には一部の例外を除いて緊張した表情の少女達が乗っていた。
彼女達は小さな窓越しに外の様子を見たり、近くの子と小声で話したりして、根源的な不安感を紛らわせているようだ。
その最前列の席に座っていたのは、巫女に協力を依頼した金髪少女である。
彼女は腕時計を確認すると、一つ頷いてから座席から立ちあがり説明をはじめた。
「皆さ~ん! 目的地への到着予定時刻が近づいていますので、念のために本日の目的について、もう一度おさらいしますね!」
「「「は~い!」」」
あまり緊張していない様子の金髪少女に釣られてか、バス内の緊張は少しほぐれたようだ。これもある種のカリスマであろうか。
「本日の目的は霊災跡地に滞在しての霊力向上訓練です! 霊災跡地は危険なので、
霊災というのは、神など高位の霊的存在による災害のことである。
高位の霊的存在が暴れると、あっという間に街がバスの外のような状態になってしまうので、古くから災害扱いされているのだ。
「はい」
おさらいというには内容があるようで無い話にピシッと手を上げたのは、肩で切りそろえた黒髪の内側を紺色に染めた少女。
何やら
「な、なんでしょうかアリサさん。なんだか怒ってますか?」
「怒ってない」
怒らせるようなことをした覚えがないのでアワアワしている金髪少女をアリサの隣に座っていた桃色巻き毛の少女がフォローする。
「大丈夫だよ。アリサは部長が霊能力者を名乗る詐欺師に騙されているんじゃないかって心配しているだけだよ。心配性さんだね」
「心配性じゃない。普通。だって……」
アリサがビシッと指さした先には、バスの運転席で丸くなって眠る巫女の姿があった。完全に職務放棄である。
「あの人、ずっと寝てる。バスに乗ってからずっと」
「アゲハさん!?」
名前を呼ばれた巫女は座席から飛び上がって身構えた。
「ほわっ? 襲撃ですかっ!?」
「襲撃じゃないです! でも寝てしまうのは色々とマズいですよ!?」
「……自動で全部やってくれるバスの運転が暇すぎてつい……」
「つい、じゃありませ〜ん! あまりにひどいと、後払い分の報酬をカットしなくてはいけなくなってしまいますよ?」
「そんな〜っ! ヒドいよっ!」
全くもってヒドくない。当然の宣告である。
しかし文明の利器とは、かくも人を
悪いのは人か、それとも道具なのか。
ただ、この場においての事実は。
自動運転は完璧な仕事をし、眠り巫女は完璧に仕事をしていなかったということである。
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