下ネタを名のある作家に読ませようと試みる私

カドイチマコト

下ネタを名のある作家に読ませようと試みる私


「足、臭いけど、良いかな?」


 甥っ子を笑わせるための、この言葉から今作の構想は決まった。


 ちなみに最終的にはガラリと変わってしまったため、まずはアイデアの変容から述べよう。


 冒頭の『足、臭いけど、良いかな?』。これは一回だけなら使いやすいのだが、毎度となると、やや勝手が悪い。


 そこで『今日も』という文を付け足し、方言を加えて、『足が臭いねん』に変えた。繋げると『今日も足が臭いねん』。我ながらすばらしい。


 念のため言っておくが、私の足は決っっっして臭いわけではない。ネタである。


 さらに進化を加え、『今日のおならは臭いねん』という新たな名言が生まれた。


 しかし、甥っ子に見てもらうには義理の妹のスマホにラインを送信しなければならない。必ず見られるため、さすがに義兄としての面目が潰れる。


 ゆえにこれは使っていない。


 と言っても、小説で使うにあたり、臭いだけではごく普通。物足りない。おならで死んでしまうという設定にしたのである。




 来たるカクヨムコンテスト間近の十一月下旬、AIのグーグルジェミニに尋ねる。


「ねえねえ、じぇみにん!円城塔さんは下ネタの作品読むかな?」


 私は日頃マンガばかり読んでいるので、この人が誰だか知らなかった。なぜ、尋ねたかというと、今回の短編小説部門、円城塔賞の審査員だからである。


「可能性はゼロではないとは言えます」


 この答えを聞いて、試しに執筆済みの作品を読ませてみた。


「読む確率は高いのではないでしょうか?」


 聞きたい答えではなかったので追加で尋ねる。


「ところでさ、この神様、誰だかわかるかな?」

「いいえ」


 AIに分からないようヒントを散りばめることに成功していた。発表すれば、いい線いくかもしれないと、にやりほくそ笑む。


 ――ちょっときもいけど、スルーしておくれ。


 執筆した作品の内容は巷に溢れる異世界転生を揶揄、つまり馬鹿にする設定と見せかけて、分かる人には神話パロディという二重構造。それゆえ、モチーフにした神様が誰だか分からないと、評価が分かれてしまう。


 さて、どの程度の読者が気づいてくれるだろうか。当初のヒントは器のみであったが、難関すぎる気がして、名刺や名乗りを付け足した。


 その他に苦心したのは、『やせい』という文字を組み入れること。遊び心で『小説野性時代』と掛けたかったからである。


 転生=生まれ変わりから生まれたままの姿ということで、主人公を全裸にするという荒技を使った。ワイルドだろう?


 後で正しくは『野生』ではないと気づいたが、円城塔さんもSNSで間違っていたためセーフとしてほしい。


 ――しまった。みんなが気づいていない誤りを広めてしまったかもしれない。


 お詫びと言っては何だけど、小説の地の文を極力削り、二千文字ちょいとさせていただいた。


 これは手抜きではない。多数の作品を読まなければならない先生への配慮だ。こんな私でも、バファリン一錠並みの優しさは持っているのである。


 タイトルは見た目を考慮し、『不遇スキルで神をも喰らう!』とした。


 終始痛い行動に加えて、食べられて神様=ゴッドが痛いということをもじって、『ゴッド痛っ』からの『ゴッドイーター』。日本語に訳すと『神をも喰らう』。


 ――やや無理筋だな。まあ、諸君。見逃してくれたまえ。


 ここまでしっかり考えたのだが、私は未熟で無名な書き手。読者選考を通る気がしない。それで、この作品を円城塔賞に応募することに決めた。


 この賞は真実か否か、本人へのインタビューに、『審査員は全部に目を通すということでもよい』と書かれており、少なからず読まれる可能性あるはず。


 ――何か書いてる途中で、ダメな気がしてきた。


 うーん。こうなれば、円城塔さんに目を通して頂けるよう、八百万の神に祈るしかない。と言っても、『波邇夜須毘古神』はイメージが悪く、御免こうむりたいものである。


 初エッセイなのでうまく書けたか分からん。でも、わ。




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 P.S.要約しすぎて答え出してるやんって、突っ込んでいただけたら幸いでございます。

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