第37話 人魔戦線4
「何だ……? どうなっている!?」
御岳の
喜びに沸いていた自衛隊員たちの声もだんだんと静かになっていく。
恐竜円盤のゼオンとバハルを見て、ボクは驚愕した。
ゼオンの前に黒い小さなボールのようなものが浮かび、それを中心に、混じり合った爆煙とオレンジ色の閃光が楕円軌道を描いて回っていたのだ。
「あれは……まさか、ブラックホールか? 超重力場が引き起こす時空の
ボクは茫然と呟いた。
オレンジ色の光の筋が、滑らかな楕円の凹みを照らした。それはまるでスケボー競技のボウルプールのように滑らかさだった。
極めて高い質量を持つものが中心にあると、そこに漏斗状に吸い込まれていくような重力場ができ、その周りを光でさえ回るのだ。
中心にいるゼオンとバハルがボールの重力の影響を受けていないのは、術者であるためか、それとも重力を立つ魔法を同に己にかけているのか――。
「これを使わせるとは、お主たちの使う武器も大したものよな。メガデス・グラヴィティ・ボール。全ての攻撃は、このボールの周りにできた重力の歪みに沿って動くのみ」
ゼオンがニヤリと笑う。
すると、爆音を立てて、ミサイルが続けて三発飛んできた。
執念を感じさせる攻撃。
――閃光を放ち、ミサイルは立て続けに爆発したが、強力な掃除機で集められるかのように、爆発の威力は一塊に集約され、先ほどの爆煙と一緒にぐるぐるとゼオンの周りを回った。
最初は大きなオレンジ色の雲の塊のようだったそれは、回る度に徐々に一塊の小さな太陽のようになっていった。
ブウゥン……と、鈍い音を立てて回転するそれは触れるだけで蒸発してしまいそうな圧力を放っていた。
「さて、もらったものは全て返すとしようか……」
そう言って、ミサイルの飛んできた方向へゼオンが手をかざした。
「止めろっ!!」
ボクは思わず叫んだ。
一塊の小さな太陽のようになってしまったミサイルのなれの果ては、
シュンッ!! と、音を立ててやって来た方向へと飛び、瞬く間に見えなくなった。
ゼオンの前に出現していた黒いボールのようなものも音も立てずに消えた。
間違いなくあれを発射した元の場所へと帰っていったのだ。
「さて。護雷王だったか……。先ほどの武器が奥の手だったのだろう? それが潰れた今、我になお攻撃を続ける意思はあるのか?」
ゼオンが笑った。
と、同時に上空にいる護雷王に、周りの魔族、魔物たちが襲いかかっていった。
護雷王は高速で飛びながらガトリングガンを撃ち、高周波ブレードナイフで敵を切り裂きながら飛んだ。
地上の自衛隊からも戦闘ヘリコプター、アパッチが飛び上がり、空を飛ぶ魔族、魔物たちをミサイルや二〇ミリ機関砲で攻撃する。と、同時に地上の生き残りの戦車や高射砲、榴弾砲なども一斉に火を噴いた。
魔族、魔物たちも一切怯むこと無く、自衛隊へと群がっていく。
「部下どもよ。一旦引けっ! この勇敢な人間たちに敬意を表して、魔王軍の第一将軍、極炎のバハルが直々に手を下す!」
先ほどのゼオンの言葉と同じように、脳裏にバハルの言葉が響いた。
途端に、潮が引くかのように一斉に魔族、魔物たちが自衛隊から離れていった。
バハルは何やら大声で叫ぶと、上に掲げた右手を下に振り下ろした。
と、同時に、幾つもの竜巻が巻き起こり、紅蓮の炎が絡みついていった。そして、それら無数の竜巻は自衛隊へと向かっていった。
アパッチヘリも、戦車もボロボロに錆びて崩れていく。陸自の他の兵器も同様に消えていき、ついには隠れて設置されていた自衛隊の陣地にもその竜巻はやってきたようだった。
「見ているのだろう。黒井よ……。俺はもうダメかもしれん。だが、ロフウさんと一緒にできるだけのことはする」
陣地にある自衛隊のカメラに向かって、御岳が言った。
「おい! ボクの言うことをたまには聞けっ!! 御岳、死ぬなっ!! 生きて帰れっ!!」
ボクは叫んだが、カメラは一方通行なのだ。ボクの声が聞こえるはずは無いのに、御岳は人差し指と中指の二本を立てて、ボクに向かって振ってみせ、微笑んだ。
ボクの目にいつの間にか、涙が溜まり溢れていた。
「よし。護さん!! 私も一緒に行く!!」
「おうっ! 子どもの頃に習った空手が唸るぜっ!! 見てろよっ、ゼオンとバハルの野郎っ!!」
二人の叫び声が響くが、これから一体何をするのか全く分からない。茫然とカメラ映像に見入っていると、ロフウが呪文を詠唱し始めた。
「この地にいる富士の精霊たちよ。そして、永きにわたり人々の営みを見守り、この日本の国を守りし富士の山の神よ……。ここに巣くおうとする魔を討ち滅ぼすため、我ら二人と護雷王を合一させたまえ――。
ロフウの叫び声が響き渡った。文字通り、ボクの脳裏にまで届いたのだ。
同時に陣地が強風が巻き起こすノイズに飲まれ、カメラ映像が途絶えた。バハルの竜巻に襲われたのだ。
護雷王を追いかける自衛隊のカメラは生きていた。
そこに映った護雷王は、光り輝いていた。これまで見たことの無いほどの目映い光だった。装甲の裏にある魔方陣や魔法記号は全て外に反転し、周りの魔素を吸い込みながらエネルギーに変えている。
そして、戦い方が明らかに変わっていた。動きが人間くさくなったと言えばいいのか。迫り来る魔族、魔物たちに回し蹴りや肘打ちを決めながら、ガトリングガンや高周波ブレードナイフでとどめを刺す。さらに、その動きはこれまで以上に速くなっていた。瞬間移動のように、一瞬消えるのだ。
魔族、魔物たちが攻撃をしたときには既に後ろに移動している。あり得ない速度だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます