第36話 人魔戦線3
最後のゾンビ・ゴーレムが地面に倒れた直後、海のある東の方向の空に、
「ついに、本体のお出ましか……」
御岳はそう言うと、ARグラスを被り、コントローラーを手にした。
ボクは自衛隊のカメラに映る魔族たちの映像を見て、思わず震えた。
蝙蝠のような魔物に、恐竜の翼竜のような魔物、また巨大なカラスのような魔物など、地球の有翼の生物に似ているが、どこかが決定的に違うものたちが空を飛んでいる。
その中でも目立つのは、一際巨大な円盤のような物体だった。
よく見ると円盤の上には三本の角を生やした恐竜のような首と頭、そして巨大な尾がある。
円盤の上には巨大な豪華な椅子に座るゼオンとバハル、さらには幾人もの魔族たちがいた。おそらくバハルに連なる直属の魔族なのだろう。
なぜ、あんな巨大で羽根も無いものが空を飛んでいるのか全く理解できないが、おそらくは飛行するための魔法で飛んでいるのだろう。これに乗っている奴らが、魔族の中枢を担う者たちであることは間違いなさそうだった。
「人間どもよ。魔王ゼオンが直々に参ったぞ。お前らのありったけでかかってこい。褒美に絶望を与えてやろうぞ……」
ゼオンの声が脳裏に直接響きわたった。
不思議なことに、離れたところから見ているボクの頭にもゼオンの声は響いた。
魔族は鬨の声を吠えるように上げ、羽根を持つ魔物たちの背中に乗ったり、一つに合体したりして地上の自衛隊の部隊へと向かった。
同時に、森の一角がざわめいた。
それまで隠れていたのか。地上からもおびただしい数の魔族、魔物たちが襲いかかってきた。
自衛隊に襲いかかる魔族たちは、古い百鬼夜行の絵にある妖怪のようでもあり、様々な獣や虫の群れのようでもあった。
自衛隊も、向かってくる魔族、魔物たちに一斉に火力を解放した。
弾丸の当たった魔物たちは一撃で弾け飛ぶものもいれば、ダメージを受けないものもいた。
ダメージを受けない魔族、魔物は、単純にタフなものと魔法防御で防いでいるものに分かれた。単純にタフな魔物も、再生速度が速いものもいれば、甲羅のような硬い身体を持つものもいて、同じ種類の生き物とは思えない。
だが、いずれにしても、有象無象のおびただしい数の魔族、魔物たちが、自衛隊の攻撃を全く意に介さずに次から次へと向かってくる様子は、怖気が立った。
「よし。護雷王出撃だ!!」
御岳が叫ぶ声が聞こえたかと思うと、金属的なジェット音が響き渡った。
護雷神のカメラ画面が、暗いところから空中へと移動し、次に空を飛ぶ魔族たちを映す。
どうやら、最初から
ボクは護雷王を追いかける自衛隊のカメラ映像と並列で、状況を追いかけた。
護雷王は空を飛ぶ魔族、魔物たちの間を突っ切って、円盤の上に陣取るゼオンとバハルの元へと飛んでいった。
ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュッ!!
ロケットランチャーが発射音を響かせる。両肩に付けたロケットランチャーのうち、右肩のロケットランチャーから四発撃ち込んだのだ。
ミサイルはゼオンとバハルの前に陣取る四体の屈強な魔物たちに軒並み直撃した。
魔法強化済みの護雷王のミサイルは、自衛隊の弾丸よりも強力らしい。直撃を喰らった魔物たちは血を流し、膝をついた。
護雷王は、間髪入れずゼオンとバハルにガトリングガンを乱射した。
ギャ、ララララララアアアッッッ!!
銃身の回転する音が響いた。
だが、
ド、ガ、ガガガガガガガガガガッ!!
と、鈍い音を立て、透明な魔法防御シールドが弾丸を弾いた。
ゼオンとバハルは椅子にくつろぎ、悠然と赤い液体の入ったグラスを傾け、人の手足や生首を喰らっていた。
ガトリングガンの弾丸も魔法強化済みのはずだったが、二人の強力な魔法力のせいか、防御シールドを貫ける感じは全くしない。
すると、バハルが右手を伸ばし、何やら叫んだ。
護雷王を火炎が包み込んだ――と、思ったが、間一髪避けたのだろう。凄まじい速さで上空へ飛び上がった。
同時に、何やら返しのフックがついた銛のような弾丸が右手の指先から撃ち込まれ、床に突き刺さった。
それは赤く点滅していた。
護雷王は恐竜円盤から離れた上空でホバリングしながらゼオンとバハルを睨む。
一瞬の静寂。
次の瞬間――
グゥオオオオオオオッ!!
という轟音が空一杯に轟いた。
空の一点がキラリと輝き、それは恐ろしい速さで飛来し、恐竜円盤に迫った。
あっという間に、それは恐竜円盤に炸裂した。
ド、グアアーーーンッ!!
オレンジ色の閃光と爆煙、そして爆発音が響き渡った。
「いやったああああっ!!」
自衛隊の陣地から歓喜の声が湧き上がった。
後で分かったことだが、それは生き残っていた米海軍の原子力潜水艦からの潜水艦発射型弾道ミサイル( submarine-launched ballistic missile= SLBM)で、核弾頭でこそないが、相当の威力を持ったものだったのだそうだ。
護雷王が放った点滅する銛のようなものは、目的に照準を合わせるためのマーカーで、それをめがけピンポイントで狙うという作戦だったのだった。
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