第38話 人魔戦線5

 どうやったのか、想像もつかないが、御岳とロフウの二人は今、護雷王と一体となっている。

 魂だけが宿っているのか、それとも身体ごと護雷王と一体となっているのか、全くの謎だが、今までコントローラーで動かしていた護雷王を、御岳はまさに一心同体となって意のままに動かしているのだろう。

 その証拠に御岳が幼い頃に学んでいたという空手の技まで繰り出している。


 おまけに、あのアステリア戦の時と同じように、全ての魔方陣、魔法文字をむき出しに露出して、周りの魔素を吸収しながら戦っている。あのときよりも、多くの魔素に満ち満ちたこの環境は、あのロフウの施した魔素吸収システムがより力を発揮するに違いない。


 御岳とロフウは、真護雷王しんごらいおうと叫んでいたが、これが護雷王の最強形態と言ってもまず間違いない。まさに奥の手だとボクは思った。

 護雷王のカメラごしに驚愕の表情を浮かべるバハルの顔が見えた。


 フィイイイーーーーンッ!!

 高速で回転するモーター音が響いてくる。

 護雷王の両手のひらが開いた状態で回転し、バハルの放った炎の竜巻を吸収しているのだ。

「馬鹿な!? 我の最強魔法がっ!?」

 バハルの驚愕の声が響く。

 触れたものを腐食させるはずの炎の竜巻が、護雷王の魔方陣の描かれた両手のひらから吸収されていくことにバハルは驚いているのだった。


 幾つもあった炎の竜巻は、いつのまにか全て無くなっていた。

 すると、それまで青白く光っていた高周波ブレードナイフの刃が、真っ赤に変化した。

「真護雷王、紅蓮雷霊爆撃斬ぐれんらいれいばくげきざんっ!!」

 御岳の叫び声が響き、バハルに向かってそれが振り下ろされた。

 逃げようと身を翻したバハルの右腕が切り飛ばされた。


 そのまま振り下ろされた真っ赤な刃は異常なほどに伸びていて、巨大な恐竜円盤そのものも真っ二つになる。そして、右腕を斬り落とされたバハルもろとも地上へ落ちていった。


 ゼオンは空中に浮かび上がり、目の前に再びメガデス・グラビティ・ボールを出現させていた。

 真護雷王は横薙ぎに高周波ブレードナイフを振った。

 メガデス・グラビティ・ボールの作り出す時空の歪みが、真護雷王の紅蓮雷霊爆撃斬ぐれんらいれいばくげきざんを受け流す。


 そして、攻撃を受け流しただけでは無く、真護雷王の身体までもが時空の歪みに引っ張られ、まるでレールに乗せられたかのように回転を始めた。

 だが、真護雷王はもがきながらも両手のひらをメガデス・グラビティ・ボールへ向けた。そして、両手のひらを回転させて魔素の吸収を始めたのだ。


「むう……大魔道士ロフウの力か……」

 ゼオンは呻くように言って、メガデス・グラビティ・ボールに向け、両手を伸ばし力を込めた。

 ゼオンの両腕に血管が浮き上がり、黒い球が徐々に大きくなっていく。

 だが、真護雷王の魔素吸収システムも同時にフル回転を始めた。黒い霧か煙のようなものが黒い球から引き剥がされ、真護雷王へと吸収されていく。


「ゼオンよ……。今、真護雷王はバハルの魔力も吸収し、最強の状態にある。お前のその力ももらい受け、真護雷王はさらに最強の頂へと進む……」

 ロフウの言葉が脳裏に響いた。テレパシーとなってその場に生き残っていた自衛隊員にも聞こえたはずだった。


 真護雷王は徐々に真っ黒になっていき、ついにメガデス・グラビティ・ボールは消えた。

 右肩のロケットランチャーから残り四発のロケットが一斉に打ち出された。

 ゼオンを守る重力の歪みはもう無い。

 四発のロケットは全てゼオンに直撃し、オレンジ色の閃光を上げて爆発した。


「よしっ!!」

 映像を見ていたボクは思わず叫んだ。

 爆煙が徐々に晴れていく。

「それが本当の姿か……」

 御岳が呟いた。


 そこにいたのは、金色の瞳を持ち、青黒い金属色の鱗を持つ羽の生えた恐竜のような生き物だった。

 頭には太い三本の角が捻れながら生えている。


「メガデス・グラビティ・ボールを破っただけで勝ったつもりになるなよ……」

 ゼオンは地獄から湧き出すようなしゃがれ声で言った。

 そして、両手のひらを広げ、左右から何かを掴むように、両手を近づけていった。

 ミシ、ミシ、ミシッと真護雷王の装甲が鳴り、ひび割れができていく。


「この真の姿になった今、我の力は歯止めはきかぬ。ロフウの魔法防御など関係ない。重力でペシャンコに潰してやるわ」

 ゼオンが笑った。

「グアアアアア――――ルルルルルッ!!」

 真護雷王が空に向かって吠えた。


 真っ黒に変化した真護雷王の口の部分が、メリメリと音を立てて開いている。

「なっ!?」

 ゼオンが驚嘆する声が響いた。

 真護雷王は、頭を何度も振ると、左右から迫る重力のくびきを両腕で押し拡げきった。

 そして、その場から消えた。

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