第27話 伝説の誕生

[勝者、《クローバー》!]


 システムメッセージと共に、フィールドに《クローバー》の勝利が宣言される。静まり返っていたコロシアムは、数秒の静寂の後、割れんばかりの大歓声に包まれた。無名ギルドによるトップギルド相手の圧倒的な下剋上。誰も見たことのない「岩窟城塞作戦」や「サイキック剛断」、そして「ダブルアクセル」によるカウンター。

「おいおいマジかよ! 全員盾からモンクのタイマン勝利まで、情報量が多すぎるだろ!」

「あの戦術、プロも真っ青だぞ!」

「マスターモンカーズ相手に完勝かよ……次の試合、絶対見逃せねえ!」

「あのクールなモンク、マジでファンになった!」

 興奮した観衆の声が飛び交う中、アリス、ルーナ、フィリアの三人がメイのもとに駆け寄ってくる。フィリアはもう泣いている。アリスとルーナはハイタッチを繰り返す。

「メイちゃん! やったね! すごかった!」

「まさかダブルアクセルでカウンター決めるとはな! 最高だぜ!」

 この勝利はセカンダリージョブ実装後の世界に、《クローバー》という異質な存在を強く印象づけるものとなった。

「みんな、ナイスファイト」

 メイのクールな表情にも、満足げな笑みが浮かんでいた。



 勝利のファンファーレが鳴り響く中、光の粒子から復活した《マスターモンカーズ》の面々が、こちらへと歩いてくるのが見えた。

「「「あっ」」」

 フィールド中央で対峙する両者。先ほどまで殺気すら感じさせる戦いを演じていたとは思えないほど、和やかな雰囲気が流れる。

「《クローバー》、強かったよ。完敗だ」

 リーダーのルーゼンは、清々しい表情で頭を下げた。初戦の《バラスト》同様、潔い態度だ。

「い、いえ! こちらこそ、凄いスピードでした!」

 アリスが慌てて頭を下げる。

「俺らも隠し称号使ってたんだ。スタン効果半減の『拳の探求者Ex』と、攻撃に耐久値減少効果が付く『拳の先駆者』。まさか、それすら通用しないとはな」

 ゴルグが笑いながら小声で手の内を明かす。

「どうりで盾の耐久値の減りが速かったわけだ」

 納得するメイにルーゼンが歩み寄る。

「盾モンクなんてゲテモノ複合職にタイマンで負けてちゃ立場ないぜ。だが、メイ、お前は強かった」

「ルーゼン。あなたもトリプルアクセルも強かった。最後は紙一重だったわ」

 メイはクールに返す。

「モヒカンにすれば特別にうちに入れてやるよ」

「遠慮しておくわ」

 笑顔で返すメイに、冗談だという顔で笑うルーゼン。

「そうか、気が変わったらいつでも来い。称号持ち同士、今度情報交換させてくれ」

「いいわよ。ただし、情報提供はそっちが先よ」

 ルーゼンが驚いた顔をする。お互いに手の内を知り合ったことで、奇妙な連帯感が生まれていた。

「オッケーオッケー、次の試合も頑張ってくれ。応援してる」

「「「ありがとうございます!」」」

 和やかな雰囲気の中、《マスターモンカーズ》の面々はフィールドを後にする。この戦いは、トップギルドと無名ギルドの間に、確かな友情の芽生えを感じさせるものとなった。



 試合後、ギルドハウスに戻った四人は、勝利の余韻に浸りながらも、次の戦いに向けて決意を新たにする。

「さーて、次の相手はどこだ?」

「私たちの『全員盾』戦法……完全にバレちゃいました」

 フィリアが少し心配そうに言う。

「大丈夫、次も私たちだけのスタイルで楽しみましょう!」

 メイがクールに言うと全員が頷く。

(私たちは、まだまだ強くなれる)

《セカンドワールド・オンライン》の世界は、セカンダリージョブの実装によって新たな展開を迎えていた。メイたちは、これからもこの世界を自分たちのスタイルで楽しんでいく。

「目指すは、盾+2だ!」

 ルーナが拳を突き上げる。

 四人の冒険は、まだ始まったばかりだ。




 作者より

 ここまでお読みいただきありがとうございます。書きためがなくなったため、ここからは不定期更新になります。今後ともよろしくお願いします。

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セカンダリージョブはシールドで! 友野紅子 @tomonokouko

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