第6話
シミュレーション後、謎の戦闘力解明の瞬間
戦闘から生還した紅蓮・色即是空のメンバーは、教室に戻り、深い疲労と共にそれぞれの位置に座った。
シミュレーション中の異常な戦闘を振り返りながら、まだその余韻を引きずっている。
リギア、般若、蓮華は無言でそれぞれの席に座り、戦闘の結果に思いを馳せていた。
ただ、普段冷静な生無だけは異常な静けさの中で、タッチパネルを操作し続けていた。
彼の顔は、いつもの表情をしていたが、その手のひらで映し出されるデータは、明らかに何か異常なものを示している。
「このデータに間違いはない…」
生無が呟くように言ったその言葉に、リギアがわずかに顔を上げる。
「どうした?」
その問いかけに、生無は無表情のまま応える。
「シミュレーションフィールド内の謎の戦士のデータ、再解析しました。」
生無の指がタッチパネルを滑り、データが次々と表示される。
「戦闘データには確実に不自然な点がありますが、それを除外して計算した結果、この戦闘力…S級に匹敵しています。」
その言葉を聞いた瞬間、教室内の空気が一瞬で凍りついた。
「S級だと…!?」
リギアがその言葉を繰り返し、眉をひそめる。
「そんなはずはない。世界に数人と言われているんだ…。」
彼女は冷静に言葉を吐いたが、その目には明らかに不安の色が浮かんでいた。
生無はその目を鋭くしながら、次々と解析結果を表示する。
「間違いありません。シミュレーションフィールド内の全データを解析した結果、あの戦士の戦闘スタイルや反応速度、戦術の複雑さからして、S級レベルの個体である可能性が高い。」
「S級…」
蓮華がその言葉を呟き、わずかに体を震わせる。
「どういうことだ。あんな人物が、なぜ今現れた?」
般若の顔には一瞬の驚きが浮かんだ。普段、どんな相手でも「雑魚」と軽視している彼にとって、これほどの戦闘力を持つ者が現れたことは驚愕に値した。
生無はさらに続ける。
「僕の解析によれば、あの戦士はプログラムされたAIじゃない。おそらく、人間だ。どこかの組織が送り込んだエージェントか、何かの実験体かもしれません。」
その言葉が重く響くと、教室内の空気がさらに緊張を増す。リギアもその言葉に静かに耳を傾け、真剣な表情を見せた。
「あの人物は、僕たちのシミュレーションに介入する目的があったと見るのが妥当です。あの戦闘力を見れば、単なるハッキングやテストのために送り込まれたわけではない。何か目的があっての行動だ。」
生無はタッチパネルを見つめながら、冷徹に分析結果を続ける。
「…次回以降のシミュレーションで再度、彼に遭遇する可能性も高く非常に危険です。」
リギアは、再び冷静に思案した。
「私たちのチームはどう戦うべきか…」
彼女は呟いた。戦闘における計算が進んでいる証拠だが、心の中では、この新たな敵に対する不安と興味が入り混じっていた。
その後、生無の解析が続く中、蓮華が静かに口を開いた。
「その人物、何か…目的があって私たちの前に現れたのですよね?」
生無は一瞬、その問いに答えることなく、タッチパネルに目を向けた。
「おそらく…ですが、現時点では何とも言えません。しかし、今後の戦闘で彼の動向に注意を払わなければなりません。」
リギアも頷く。
「……次回のシミュレーション、準備は万端にしておく。」
その言葉が、全員の心に鋭く響く。
紅蓮チームは、この予測できない脅威に直面し、次のシミュレーションに向けて準備を始めることになる。あのS級戦闘力が再び現れたとき、彼女等はどのように戦うべきか、誰もがその答えを探し続けていた。 だが、まだ誰も知らない。 その人物が果たしてどこから来たのか、何を目指しているのかを――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます