第10話 魔物と言う者
「魔物が避けるのか? それとも、神聖院が守ってるのか?」
確かに、この世界には魔物という生き物がいる。
動物とは違う、魔力を宿した存在。
ただ――魔物が人間の国を積極的に襲うことは少ない。
それは魔物の知性によるものだと、僕は思っていたけれど。
僕の疑問に、レンはかすかに首を振る。
「両方よ。魔物は“魔力の強い場所”を嫌う傾向があるの。
神聖院の聖域は、魔力が濃すぎるから、近寄らないだけ」
これ、神聖院の中でも秘密だからとサラッと怖いことを口にするレン。
「魔力が……濃い?」
更にレンは続ける。
「この世界に魔物は昔からいる。
外の森や山には普通にいるし、聖域外は普通に人間を襲う。
人間は魔物を討伐対象として扱うことも多い。
でも――魔物の正体について、本当のところを知ってる人は少ない」
「正体……?」
「魔物は魔法生物でも、ただの怪物でもない。
“魔力に触れすぎたもの”が、形を変えた結果。
魔力を使ったのではなく、魔力に呑まれたの。
魔物は自分より濃い魔力を持つ場所に恐怖を抱く。
だから、近寄らない。――魔力酔いを嫌って」
僕は言葉を失った。
魔力に――触れすぎたもの?
レンは僕を見た。
感情の読めない瞳で。
「魔法は、人が魔力を形にしたもの。
魔物は、魔力が生物を変えたもの。
……続きは何か食べながらにしましょう。」
レンはそう言うとパンと水を取り出し、
家は朽ちているのに何故か薪をくべたばかりであろう暖炉に火をつけ始めた。
魔法のはじまりに僕はいた @jackbot
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