恋の終わりは突然に

 今日はクリスマス! 彼氏と会う約束している。

 私は鼻歌を歌いながら、彼氏の家に向かう。

 楽しみだな~。

 クリスマスに会えるの最高すぎでしょ!

 しかも誘ってくれたのは彼の方から。もうこれは勝ち。


 本気でそう思っていた私は、この後の出来事は嬉しいことしか想像していなかった。

 まさかこのために呼ばれたなんて…。なんでこんな日に…。

 この時の私には、知る由もなかった──。


 ──ピンポーン。

『はーい』

「私!」

『今行くー』

 そうして少し経ったら彼が目の前に現れた。

「ごめん、待った?」

「いや全然」

「ならよかった。お邪魔しまーす」

 そう言い私は彼の家に上がる。

 相変わらずかったるそうにしてるな〜。まあそういうとこが好きなんだけど♡

 私はそんなことを考えながら、彼に着いて行った。

「ん。適当に座ってていいよ」

「ありがと〜」

 私は溢れ出した笑みでそう言って、遠慮なくソファーに座る。

 彼はキッチンに行って、どうやら紅茶を淹れてくれているようだ。

 私が紅茶好きなの覚えてて、それから彼と過ごす時は彼も一緒に紅茶飲むようになったんだよねー。

 可愛いとこあるんだから♡


「ん」

 そう言って目の前に差し出されたのは、レモンティー。

 私は目を輝かせながら彼の目を見て言う。

「ありがとー!」

「もしかしたらちょっと熱いかもだから気をつけて」

「うん! わかった」

 ほんとに気遣い上手で優しいんだよな〜。

 普段はかったるそうで、女子に興味ないのかなー? とか人に興味ないのかなー? とか思わせるような人だけど、好きな人の前では男らしいし優しい。

 誰にでも優しい人もいいけど、恋人関係になったら場合、そうじゃない方が私は好きだ。

 そしてしばらく他愛もない話をしていて、話が底を尽きた時、彼が少し険しい表情をして口を開いた。


「ねえ、俺たち別れない?」

 私は急な発言に驚いて、声すら出なかった。

 我に返った私はやっと口を開く。

「え…え、なんで…?」

 そう少し震える声で笑顔で言う。

 冗談じゃないの…? 冗談でしょ…?

「俺、他に好きな人出来ちゃって。目移りした状態のまま付き合っていたくないから、別れ…たい」

 私の表情を見て、彼は申し訳なさそうに、途切れ途切れに言葉を漏らす。

 しばらく私が受け入れられなくて沈黙が続く。するとまた彼が先に口を開く。

「俺…好きな人には嘘つきたくないし、裏切るようなことは絶対にしたくない。だから浮気とかも絶対したくないの。そういう意味で別れたい…って……」

 私は自然と涙が溢れていた。

 本当に気づいたら、頬に涙が伝っていた。

 私はひとつ、彼に質問する。

「私のことは…もう好きじゃないの…?」

 少し戸惑った様子の彼。

 彼はしばらく考え込んで口を開いた。

「好き…だよ…。でも…他の女の人のこと考えながら付き合ってるの想像したら、お前がきつくなりそうだから…。きつくない…? こうやって話してる時も会ってる時も、他の女の人と重ね合わせて喋ってるとか」

「え、そんなことしてたの…?」

「いやまだしてないんだけど、その可能性が出てきちゃう気がするから、別れようって言ってるの」

 私は何も言えなかった。彼の言っていることが正論すぎて、どちらかといえば何も言わなかった。抵抗できなかった…。

 別れたくないって…言えなかった…。

「そういうことだから。ごめん。今日はもう帰って」

 そう言われて、私はまるで生気を失ったかのように、重い足取りで彼の家を後にした。


 ほんとにもう終わりなの…?

 彼が切実な人なのもわかるから、彼の性格的にも納得がいった。しかも多分彼的には、私のことを思っての決断だったのだろう。

 いつもだったら送ってくれる彼のいない帰り道。

“気をつけて”と見送ってもくれなかった彼。

 でも私は、彼は彼なりの決断をしたんだと…そう思って心を落ち着かせて家に帰った。


 帰宅した途端、空がまるで私の代わりのように、大粒の涙を流し始めた。

 その雨の音に落ち着き、私は眠りについた。

 私が眠りについた頃…雨はだんだん小粒になって、もう私が寝ている頃には止んでいた。

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恋愛短編集 @nyaaaaaaa_

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