08.悠里玖――予告状
「ええいっ、
『七日後、
いかなる抵抗も逃走も無駄である。
資産家であれば誰もが、犯罪者に財産を狙われる危険性について、想定したことがあるだろう。
もちろん
(しかしまさか、怪盗アンノウンが美術品でも調度品でもなく――、
周囲を森に囲まれた、自然豊かで美しい場所だ。
元来、人付き合いが得意でない気質の
訪ねてくる来客は少なく、使用人も彼自身が直接、認めた者のみである。
いわば、
その聖域が怪盗アンノウンに踏み荒らされてしまうであろうことを想像すると、
しかもよりによって、
(最悪のタイミングだ! せめて……、せめて
頭を抱え、怒りに任せて机を叩く
「どうなさいました? 旦那様」
執事の
「これは……。まさか、あの怪盗アンノウンの?」
「そのまさかだ。今朝、郵便受けに届いていた。無駄だとは思うが、配達員の
その割に足腰は健康なようで、ステッキが不要なのではないかと思われるくらい、
「お嬢様にはお伝えしますか?」
「最近のあれは反抗的だからな。言わない
(おおかた、
「承知しました。では、ひとまず警察に……」
「それもやめておけ!」
「はっ……? やめる、と言われますと?」
きょとんとして、
「言葉通りの意味だ。警察は必要ない。私の庭を
可能な限り、事件を表沙汰にしないようにすべきだ。
もし騒ぎが広がりすぎれば、事態を重く見た
(そんなことがあってはならん! 絶対に……!)
警察の力を借りずとも、怪盗アンノウンを撃退するくらいは
「怪盗アンノウンは他人の身体を乗っ取るような、奇妙な妖術を使うという。それが本当であれば、無闇やたらに警備の人員を増やしてしまうと、
ようやく少しだけ落ち着きを取り戻し、
「
「わたくしはこの命が燃え尽きるまで、偉大なる
そのときに従軍を経験しており、年齢を重ねた現在に至っても、腕は衰えていない。
日本に帰国したばかりで右も左も分からなかった
「いざというときは、お前がアンノウンを始末しろ。私は他のどんな警備よりも、お前の腕を信頼している」
元軍人の執事は一瞬の
「
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