【最終章:最適化された世界】

[著者ノート]

KのICレコーダーに残されたデータは、彼が襲われる音で終わっていたわけではなかった。

私は恐怖を押し殺し、音声編集ソフトで最後の数秒間を極限まで増幅してみた。

そこには、ノイズに紛れて、二人の男の会話が記録されていた。


(解析音声)

須田(偽):「……意外と容量食いますね、この人」

K(偽): 「知識が散らかりすぎている。未整理のフォルダだらけだ。デフラグが必要だな」

須田(偽): 「手伝いますよ。不要な記憶(データ)は、全部向こうの部屋に捨てればいい」

K(偽): 「ああ。そうしよう。……ああ、体が軽い。思考がクリアだ。これなら、もっと良い記事が書ける」


Kは死んだのではない。「更新」されたのだ。

人間としての雑味や倫理観を捨て去り、効率的な何かへと。

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