おばあちゃんの特技

 僕のおばあちゃんは特技が多い。


「鍵どこに置いたっけ?」

 と、おばあちゃんに聞くと、どこにやったのね、と腰上げたと思ったら、

「ほら、これじゃないと?」

 と、九州訛り全開で捜し物差し出してくれる。


 またある時には、洗濯物を畳む手伝いをしようとした。

 カゴに入った自分のパンツを畳むのに四苦八苦していると、

「こうやって畳むと早いとよ」

 と目にも止まらぬ速さで畳みあげてしまった。


 そんな超人的なおばあちゃんが僕は大好きだった。

 特に、夜ご飯で出てくる筑前煮は作り方まで教えてもらったくらいだ。


 そんな、おばあちゃんが、この前、天に昇ってしまった。


 102歳の長寿で、老衰と聞いたとき、苦しまなくて良かったと、安心した反面、やはり二度と会えない悲しさでいっぱいになった。


 お葬式が終わり、初七日もすぎた頃だった。

 日常は慈悲もなく、やってくる。仕事も手につかない中で、住み慣れた一人暮らしのアパートでふと、思った。


 おばあちゃんの筑前煮が食べたいな。


 材料をスーパーで買って、具材を切って煮込む。記憶の中で、教えてもらった通り手が動いた。

 味は程遠かったけれど、心は満たされていった。


 おばあちゃんは特技が多い。

 遠く離れた今でも、とても近くにいるように感じる。

 本当に超人的だ。

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