ご褒美スイーツ

「ごめん、ほかに好きな人ができたんだ」

 そういって彼氏が手元から消えた。

「ごめんねえ速水さん、これやっておいてくれる?」

 そういって、残業が手元に残った。

 点滅する信号機はもう見飽きた。

 ここ数か月、何もいいことがないな。現在時刻も午後11時。重いため息を吐いても、肺の重さは変わらなかった。


 先日、会社の後輩から、相談を受けていた時のことだった。

「なんか、人っていいことは疑った目で見るくせに、悪いことになると、確証もなく信じちゃうんですよね」

 と、悪態をついていた。

 本人はうなだれているだけだったけれど、私はとても感心していた。

 じゃあ、自分でいいことを作ってしまおう。一念発起して会社を出た。


 帰りのコンビニ、もう店内にも人が少なく、冷蔵庫の商品もまばらだった。

 夜ご飯を何にしようかと悩んでいると、一段低い冷蔵庫の中にスイーツが並べられていた。その中に、黄色のシールが貼られているコーヒーティラミスがあった。

『半額!』と赤文字で書かれていて、思わず買い物かごに入れた。


 食べたティラミスはほんのりとコーヒーの苦味が感じられて甘さが引き立っている。

 こういうご褒美が人生をおいしくしてくれる。

 私は小さく「ごちそうさまです」と呟いた。

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