episode3.光が生むもの

(寝て…る?でも、どうしてこんなところで…)




 テーブルの上にはマグカップが2つ置いてあった。




(死んで…ないよね、だっておかしいところなんて…)




 私は尋常ではないほど震えた体でお母さんを揺すり、尋常ではないほど震えた声で呼びかける。




「お母さん……?」




 お母さんは返事をかえしてくれるわけでもなく、起き上がるわけでもなく、その場にはただ静寂だけが広がった。そして私はきっと考えることをやめたかったのだろう。気づけば包丁を自分に突き立てていた。








 包丁が私を静寂に包み込もうとしたとき、インターホンの甲高い音が頭に痛々しく響く。包丁を置くことも忘れ、重い体を玄関に進める。扉を開くと私を消し去るような光と才子ちゃんがあった。








 才子ちゃんは私と包丁を見て察したのか、私をその体で包みこんでくれた。




「ごめんね、りなちゃん……」




 私は何故か才子ちゃんなら全てを受け入れてくれるような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

副作用 @nanona4241

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画