その坂を登る道は民家が多く、昔からあるような木造建築や、最近建てられたであろう家も多い。

 辺りをキョロキョロと見渡しながら歩いていると、空が曇り、日の光がさらに弱まっていく。そして、雲に混じるかのように、うっすらと霧が立ち込める。

 建物と建物の間からうっすらと見える河岸の風景も、霧が立ち込めることでだんだんと輪郭がぼやけていき、奥の風景が見えにくくなっていく。

 霧がまちを覆い、涼しさが体を包み込んでくれるようになったが、光が薄くなっていても太陽はその涼しさに負けじと釧路中を照らし、暖める。今暑いのだから、余計なお世話だと空に向かって叫びたいほどだ。


「北風と太陽じゃないんだから、争わずにせめて涼しいままでいてくれるかな?」  


 せめて何か言ってやりたいと、ため息まじりに独り言を呟く。

 私は涼しい今のままがいいんだ!太陽は一回大人しくしてくれないかな!

 そう愚痴を心の中で叫ぶ。

 だが、その愚痴が太陽に届き、逆鱗に触れてしまったのか、霧が突然薄れていき、太陽が元気に光り始める。


「眩しっ!」


 その光は目を刺激し、アスファルトを暖める。

 熱が自身に報復するかのように、上からも下からも体を刺激し、じわじわと体を苦しめていく。そこまで暑くはないのだろう。だが、疲れた体に、ましてや坂を登っているタイミングでそんな気温になれば弱音を吐くものなのだ。


「暑いー!疲れたー!」


 そうやって誰にも聞いてもらえない弱音を吐くように叫び、坂をひたすら登る。 坂を登っていくとだんだんと車通りが増えていき、走行音が風を切りながら耳に伝わっていく。吹いた風が近くの生い茂った草木を揺らし、優しい音を響かせる。

 生い茂っている草木は自然に生えてきたものではなく、近くの小学校の活動によって植えられ、育てられたものである。青々とした景色が日の光を和らげ、心を落ちつかせてくれる。

 さっきからさまざまな景色や音に心と体がずっと癒されたり、落ち着かせてくれたりしているが、暑くて疲れているのが原因なのだろうか。まぁ、考えるにしても疲れているのであまり考えたくないので癒されること自体、「いいこと」として捉えておこうかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る